▼ Corpo di ragazzo poliziesco

ああ、やっぱり。
事件なのか。

野次馬根性で駆け付けたその場には、刺殺されたであろう男の遺体があった。
最近まではすこぶる平和だったのに、どうして今日に限って殺人事件が起きるんだか。

見たところマフィアが関係している事件には思えない。
下手に関わってもめんどくさいし、ここは大人しく日本警察にでも任せるとするか。

こんな普通の事件(とは言え殺人だが)に俺が関わったところで、俺にはなんのメリットも出て来ることはない。
俺がマフィアだとバレるのはよろしくないことなので、そのまま立ち去ることにした。
まあ、俺はバレるようなヘマはしないけどね。

けれど立ち去ろうとした瞬間、あの少年少女たちがこちらに駆け寄ってきたのが見えた。
俺のところにボールを取りに来た少年に至っては、まるで警察のように死体を調べている。
…この少年少女たち、何者なんだ?



「…死んでる。」

「殺人、てことですか?」

「恐らくな…。」



死体を見て普通にしてるこの子たち、本当にただの子どもなのかネ…肝が据わってるわ。
子どもが殺人事件に関わるだなんて世も末だなあ、なんて他人事のように思いながら見ていると、ふと眼鏡の少年と目が合ってしまった。

あれ、これマズイ気がするのは俺だけ?



「ねぇねぇお兄さん。このあたりにさ、怪しい人とかは居なかった?見てない?」

「ん…?あ、ああ、俺が来たときは第一発見者の彼女しかここには居なかったよ。」



眼鏡の少年に「怪しい奴とかは居なかった」と訊かれ、すこししどろもどろになりながらも第一発見者である女性しか居なかったのだと説明すれば何かを考え出した。
びっくりした、もしかして俺が犯人なのかと疑われてんのかと思ったよ。

俺が言うべきことは言った(つもりだ)し、これでもう俺はこの件に関係ないだろう。
さっさと帰ろうとしたそんなとき、「よーし!俺たち少年探偵団の出番だ!」なんて子どもの声が聞こえたら、そりゃ踵を返すに決まってんだろ。
子どもたちに危険なことをさせられるか。



「少年少女、やる気に満ちてるのは良いと思うんだけどね、うん。そういうのは全部警察に任せちゃった方が良いと思うんだよ俺は。」

「大丈夫です!なんてったって僕たちにはコナンくんが居ますし少年探偵団ですから!」

「いや、だから…。」



だめだ、この子たち。
何言っても訊かない気がする。

はあ、と溜息を溢して遺体に近付き、さらに遺体に近付くようにしゃがみ込む。
眼鏡の少年は俺のそんな行動に驚いたらしいけど、持っていたハンカチで所持品を探していたら何を言うこともなく様子を見守ってくれた。

へー、所持品は財布と携帯とたばことライターね。
ま、一般的と言えば一般的だわな。

携帯を開いて着信履歴を見ると、数分前に誰かと連絡していたことが解った。
なるほど、どうせ犯人はコイツだろ。



「これ、最後の連絡相手。遺体の様子を見ても死後数分ってとこだからたぶんコイツが犯人。あとは証拠。証拠は被害者の爪に揉みあったからなのか皮膚が付着しているからそれでDNA鑑定して引っ掻き傷と爪跡が合えば終わり。…で、これで満足かい?少年探偵団諸君。」

「……………。」

「子どもだけで遺体に触れるなんてもっての他だし、好奇心旺盛なことは良いことだけど…あんま危ないことに首を突っ込むんじゃねぇぞ。」



白昼の下で人殺しをしたんだ。
履歴削除なんてしている暇はないだろう。
死後硬直も見られないし、まだほんのりと温かいから死んでから間もないはずだ。
会話もしていたようだしコイツが犯人、ってことで良いだろう、あとのことは知らん。

ペラペラと俺の推測を話すと、少年探偵団は驚いたように目を丸くしていた。
あまり首を突っ込みたくはないが、まあ子どもに危険を曝したくはないし…どうせ子どもなんだ、深く突っ込まれたりはしないはず。

「もう満足だろ?」と付け加えてから優しいお嬢ちゃんの頭を撫でてやると、子どもたちは一斉にすごいだなんだとぎゃあぎゃあ騒ぎ出した。
…子どもとは言っても、約2名ほど騒いでいないで訝しげな視線を寄越してるけど。

そうだ、なんだか鋭そうな女の子が居たんだっけ、俺ってばすっかり忘れてた。
しかも眼鏡の少年まで俺を不審そうに見てくるし、余計なことしないで大人しく帰っておけば良かったよ。

そのあと無理矢理警察を呼び、あとは日本警察に任せて俺は気配を消して立ち去った。
あの場に留まったら危ない気がしたんでネ。


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