▼ Riposo in un caffe
それにしても、あの子どもたち…否、少年探偵団とはなんだったのだろうか。
結局昨日はそのまま帰宅し、家に引きこもるという素晴らしきヒッキー技を使った。
まあ部下からもあの事件以外連絡はないし、特に気にしなくても大丈夫だろう。
「あーあ、幸先不安じゃねーか。」
朝っぱらからビールを飲んでることには触れないでいただこう(俺はアルコール中毒なんかではない)。
瓶ビールひと瓶空けて、そこらへんに放置。
たまに部屋に来る部下に片付けさせれば良いよな。
だけどあの眼鏡の少年…気になるな。
もっと言えば、あのクールな美少女のことも気になる。
もっと探ってみたくはなるが、さすがにあんな子どもじゃマフィアとの関わりは持っていなさそうだし、そこらへんは一応がまんしておこう。
警備とは言っても、こんなにもファミリーの動きが見受けられなければまったく意味がない。
事務仕事でないだけだいぶマシではあるが、そうであってもこれはいくらなんでも暇過ぎる。
今日も町の散策ついでの散歩でもするかな。
…なんて、思ったのが間違いだった。
「………はあ。」
せめて瓶ビールなんて飲まず、レクサスで散策でもしておけば良かったのだろうか。
俺の目の前には小さな子どもたちの姿…そう、昨日の少年探偵団の姿があった。
どうしてこうなったか、と言うと、簡単に説明してしまえば"散歩に出てふらふらしていたら彼らと遭遇してしまった"、ということだ。
マズいと思って気付かれないうちに逃げようとしたものの、誰か(恐らく眼鏡の少年)に目敏く発見されて「あー!この前のお兄さんだー!」と子どもらしい声で叫ばれて俺の散歩はストップする。
わらわらと群がる少年探偵団に囲まれ、女・子どもには手を出さないと決めている俺にはどうすることも出来ずに、遭遇した場所の近くにある喫茶店に入って彼ら少年探偵団の自己紹介を受けた。
どうでも良い情報を、どうもありがとよ…。
「ねぇねぇ!お兄さんのお名前は?」
さて、この少年探偵団からさっさと解放されるにはどうするべきなのか…。
そんなことを考えていると、優しいお嬢ちゃん…歩美ちゃんから名前を訊かれた。
まあ、名前を教えるくらいなんてことない。
もし仮に誰かに調べられたとしても、ボンゴレ組織のデータなんて出るはずがないしな。
「俺?俺は如月。如月雄魔だよ。」
「ねぇ。雄魔お兄さんって何をしている人なの?もしかして…探偵、とか?」
「あー…そう、俺探偵なのよ。」
「そうなんですか!?」
「だからおまえすぐに犯人解ったんだな!」
歩美ちゃんの質問に応えたと思ったら、今度は眼鏡の少年…コナンくんから質問に合う。
仕事と言っても、俺の仕事はマフィアだし。
そんなもの子どもに言えるわけがない。
俺の仕事を探偵と思ってくれているのであれば、俺は別にそれでも構わない。
どうせ、すぐにコイツらとの接点は消える。
殲滅という仕事が終わり次第、俺はイタリアに帰るのだから(拷問もしないとだし)。
未だ怪しむ視線を投げ付けるコナンくんの視線を無視して、美味しそうにパフェなんかを食べている太っちょな元太くん、インテリちっくな光彦くん、歩美ちゃんを見てほんのりと和む。
たまにはこういう時間は必要だよな。
他のふたり…美少女の哀ちゃんとコナンくんは可愛気もなくコーヒー飲んでるけど。
「あれ、コナンくんたちじゃないか。今日は毛利先生や蘭さんたちとは一緒じゃないのかい?」
「あ。安室さん。」
「今日は少年探偵団の仲間の如月の兄ちゃんに連れて来てもらったんだぜ!」
「少年探偵団の仲間?」
「そう!このお兄さんも探偵さんなんだ!」
コーヒーを飲みながら和んでいると、この喫茶店の店員がコナンくんに声を掛けた。
どうやらコナンくんはここによく訪れるらしく、この店員とは顔見知りらしい。
と言うよりも、俺、いつの間にこの少年探偵団の仲間になっていたんだ?
俺ってもう、少年なんて年齢じゃねぇんだけど。
そんなことを思っていると、「探偵なんですね。僕もなんですよ」と爽やかな笑顔で言われる。
そんなことを言われても、俺は探偵じゃないけどな。
探偵ってことにしておいた方が楽そうだったから、話しを合わせただけだっての。
「僕は安室透と言います。」
「…如月雄魔です。」
向こうに名乗られたら、こっちも答えなければいけない空気になるじゃないか。
くそ、あまり不用意に自分の名前を名乗りたくはないのに…勘弁してくれよ。
あ、いや、偽名を使えば良かったのか。
まあ、今さらそんなことを思ったところで無駄だけど。
それにしてもコイツ…。
なーんか、腹黒そうな顔してんな。
こいつはあまり得意なタイプではない、ということで安室透を記憶の中にインプットする。
記憶したは良いが、コイツを覚えたところであんまり意味はなさそうだけど。
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