▼ Treno di mistero

武器の用意よし。
忘れ物なし。
準備は万端、ってとこか。



いよいよミステリートレイン当日になった。
武器の装備を近くの裏ルートまで取りに行こうとしてコナンくんたちに見付かり邪魔が入ったが、なんとか間に合うことが出来て一息。

座席は新しく買い直し、1番良いところに。
何が起きるかも解らないので、取り敢えず長居しても窮屈ではない部屋を選んだ。
どのみちあまり長居するつもりはないのだが…念には念を、ってヤツかな。
コナンくんとのこともあるし。

荷物を置いて椅子に寝転がる。
狭いことは狭いが、まあヤツらが動き出さない以上俺も身動きが取り辛い。
一応変装なしでは来たが…見付かったかどうかすら怪しいのだ、子どもたちもこの列車に乗っている以上、あまり下手な真似は出来なかった。



「ガキどもにバレなきゃ良いんだけどな。」

「なにが?」

「!?こ、コナンくん!?」

「えへへ。乗るとき如月の兄ちゃん見付けたから、ちょっと遊びに来ちゃった。」



落ち着いたことで一息ついていると、不意に俺の独り言に対して反応が返ってきた。
慌てて起き上がって見てみると、そこに居たのはあの江戸川コナンくんで。
テヘペロ、なんて言う勢いで「ちょっと遊びに来ちゃった」なんて言ってのけた。

くそ、まさか俺が気配に気付かないなんて。
持ち物が持ち物だから、変に気を配りすぎて逆に気が付かなかったらしい。
如月雄魔、一生の不覚…。



「さっさと帰れよ、コナンくん。…ったく、おまえは昨日も今日も俺を驚かせるよな。」

「えへへ。」



さっさと帰れよ、ということに、"このエリアは危険だから部屋に引きこもってろ"という意味を表していたのだが、果たしてこの無邪気な振りをしているようにしか見えないお子さんは、俺のその言葉の意味をきちんと汲み取ってくれるのだろうか。
いや、もし仮に汲み取っていたとしても、大人しくはしてくれないんだろうな…。

本当に…、この子どもには驚かされる。
窓の外の景色に目を向けて、昨日ポアロにてコナンくんから言われたことを思い出した。



『如月の兄ちゃんって、FBIやCIAの一員…とかではないの?』



神妙そうな面持ちで訊いてくるから何事かと思ったら、そうかそうか、なるほどね。
どうやら俺は、FBIやCIAの一員なのではないか、とコナンから疑われていたらしい。

残念だけどコナンくん…、その推測は間違っているよ。
俺は決して、人をなるべくは殺さないようにしているようなそんな組織の人間ではない。
俺はただのイタリアンマフィアの一員であり、元はと言えば人殺し…暗殺者なのだから。
だから俺はそんな素晴らしい仕事なんて、ひとつもしていないんだよ。

あのときは笑って誤魔化したが、コナンくんはやはり誤魔化しきれていないらしい。
その証拠に、さっきから慌ただしく視線がキョロキョロと彷徨っているのだから。
残念でした、銃とかは違うところに隠してあるから、おまえには見付けらんねぇよ。


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