▼ Chi e Lei?
いやー、もうマジで本気で勘弁しろよ。
俺、結構マジな方向で幽霊とかそういうのだめなんだってば。
「おまえたちの動きはすでに、こちらも把握している。あまり攻撃したくはないんでな。穏便に頼むよ。」
「フン。そりゃあ無理な相談だなあ。」
「(でしょうね!!)」
生きているんだか死んでいるんだか知らないが、スパツィオファミリー相手に穏便に済ませたいだのとほざく赤井秀一。
この際赤井秀一が生きているかどうかなんて関係ないが、奴らに余計なことを言わないでほしい。
スパツィオファミリーが穏便にことを済ませてくれるんなら、もう綱吉が話しをつけているはず。
なるべく人を殺めたくない綱吉ならば、こんな強行突破などはしないからな。
まったく…裏の世界の事情を知らない人間に踏み込まれたくないね。
頼むから大人しくしてくれ。
FBIに目を付けられたスパツィオファミリーのボス、覚えてろよ…絶対殺すわ。
「ならばこちらも容赦はせん。」
「寝言は寝て言え。俺がFBIなんかに捕まるわけねぇだろ?」
「!」
売り言葉に買い言葉、とはまさにこのことを言うのか。
さながら一発触発な空気の中、灯されるスパツィオの男のリング。
一般的な武器に対して匣を使うだなんて腐ってるとしか思えない。
赤井秀一は赤井秀一で匣ははじめて見るのか、目を開いて驚いている。
ばっかおまえ、そんな驚いて固まってたらブッ殺されんぞ。
「復讐者に捕まらない程度には痛めつけてやんよッ!」
「(くそっ!)」
匣にリングを刺したと同時に、俺も匣を開口する。
リングの炎はすぐに察知出来たのか、スパツィオの男の表情は驚きのものへと変わっていった。
けれどそれはすぐにニヒルな笑みへと変わり、まるで獲物を捉えた肉食動物のような目をしている。
俺からしてみたらそんなおまえが獲物なんだぞ、ってな。
「ボンゴレの死神サマも来てるってわけか!こりゃいい、楽しそうだな!」
「ボンゴレ…だと?」
「ぎゃはは!」と下品な笑い声をあげる男に対し、赤井秀一は訝しそうな声色でボンゴレと口にする。
まあ、FBIはボンゴレのことなんて知らないだろうね。
FBIの庭では何もしていないし、何よりそっちにはアジトすらないんだからよ。
そんなことはまあ、どうでも良くて。
どうにか赤井秀一には引いてもらいたいけど、どうせ引かないんだろう。
あんまり裏社会以外の人の前に立つのは好きじゃないが…この際、仕方ないか。
「あーも、おまえ、うっさいのヨ。」
「!(彼は確か…。)」
「死神サマと殺れるなんて光栄だね!」
「どの口がそれ言ってんだか。」
俺の匣動物、闇豹のキャロルで男の注意を俺に向けてその場に立つ。
そして愛銃を構えてやれば、男は楽しそうに表情を歪めさせた。
楽しそうに歪めさせるなんて、こいつどんだけ愉快な表情筋してんだよ。
男の属性は、嵐…。
根っからの攻撃型ってわけね。
ウチの野蛮な嵐属性(言わずもがな獄寺とベルフェゴール)よりも大人しい方だと良いんだけど…ま、世の中そう上手いこといったりしないんだよな。
「でもま、今日は様子見で派遣されただけだし、大人しく手を引いてやるよ。」
「は?」
「ボンゴレは確かに日本に来ていた。これだけ解りゃ充分だろ。」
匣と愛銃を使った攻撃がはじまると思った直後、男は思ったよりもあっさりと手を引いた。
なるほどね、今は敵情視察で来たってことか、回りくどい奴らめ。
どうやらスパツィオは、俺たちが思っているよりも慎重なタイプらしい。
FBIにあっさり目を付けられたりクソみたいな奴らかと思ったけど、意外と頭が使われているようだ。
スパツィオの目に、FBIは1ミリたりとも写り込んではいないだろう。
どちらかと言えば囮…。
自警団であり、ボンゴレのボス・沢田綱吉の性格を知っていれば、一般人を狙うと必ず出て来ると踏んでの囮だろう。
赤井秀一が人間だろうが幽霊だろうが、もはやどっちでもいい。
慎重なくせにやり口が卑劣なのは、やはり評判通りだ。
「じゃあな、Silver Bullet…ボンゴレの紅蓮の死神サマ。」
暗闇に溶けるように姿を消していく男。
捕まえようと思っても、赤井秀一が邪魔で匣で攻撃することもままならない。
ああ、くそ、やっぱり一般人は邪魔だ。
スパツィオが手を引いたのなら、俺がここに留まる理由などまったくない。
赤井秀一から視線を受けるが、赤井秀一も呼び止めないことからして俺を捕まえたりする気はないのだろう。
それならば、相手をする必要はない。
そのまま赤井秀一からどんどん距離を取り、車を置いてある場所へと向かう。
それにしても、赤井秀一…。
どっかで感じたような気配だったけど、はて、どこだったかな。
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