▼ Lasci una disgrazia.

俺は今、何故か遊園地に来ていた。

あれ?
この前までは俺、結構シリアスな感じだったよな?
なのになんで遊園地にいんの?



「雄魔お兄さーん!早く行かないと行列が出来ちゃうよ!」

「(ガッデム!!)」



ひとりぽつんとその場に取り残されていた俺の手を取り、早く早くとはやし立てるのはお馴染みとなりつつある、あの少年探偵団の女の子…歩美ちゃん。
なんでも、今日は某遊園地(トロピカルランドとか言ってたかな)が周年記念をしているらしく、その日限定のチケットを"園子お姉さん"に貰ったので少年探偵団の一員である俺も誘われたらしい。
なんていい迷惑なのだろう。

し、か、も。
ここにはチケットをくれたという"園子お姉さん"とその親友(と言っていた)"蘭お姉さん"も一緒なのに加えて、何故か沖矢昴も居るという、不可思議な面子。
頭を抱えたくなってしまったことは、誰もが想像出来るだろう。

いやだって俺、100歩譲って園子ちゃんや蘭ちゃん、それから少年探偵団は良いとして沖矢昴苦手なんだって!
あのいけ好かない感じ、骸にそっくりだわ…六道輪廻とか勘弁してよマジで。



「あの…もしかして雄魔さん、絶叫系苦手なんですか?乗るのやめます?」

「へ?…ああ、いや、苦手とかじゃないよ、ほんとに。大丈夫。」



歩美ちゃんと手を繋いだまま、深い溜息を零して招待客だらけのはずの遊園地で行列に合流する。
招待客だらけのくせして行列とか、いったい何人招待したんだよ。
「今日は1時間待ちなんてついてますねー!」なんて言ってる光彦くんが俺は信じられない、無理、普通の日は無理。

「なんで俺がこんなところに…」という気持ちと「こんなのに1時間並ぶとかマジかよ辛ァ…」なんて気持ちが混ざっていたから、恐らく俺は、相当変な表情を浮かべていたんだろう。
かなり心配そうな面持ちで「乗るのやめます?」なんて訊いて来た蘭ちゃんに、すこし罪悪感が生まれた。

正直なところ、こんなところには綱吉たちと一度行ったきりで、しかもそこも相当くたびれた遊園地だったから。
大きくて綺麗で本格的な遊園地ははじめてで、遊園地に対してどう反応したら良いのかさえも解らない。
まあ、歳が歳っていうのもあるけどな。

目の前でキャッキャとはしゃいでいる少年探偵団(うち2名は除外)を見ていると昔の自分がどれだけ寂しい人生を送っていたかを、ひしひしと思い知らされる。
友だちが居るわけでもなく、訓練ばかりを受け…そして、ただただ指示通りに殺しばかりを繰り返す。
だから最初、綱吉たちと出会ったときも交流の仕方に戸惑ったっけ。



「!」



懐かしいなあ、なんて思っていたら、ポケットに入れていた携帯が震えだす。
それを取り出して相手の名前を見てみたら、思わず笑いが出て来てしまった。



「ごめん、歩美ちゃん。俺ちょっと電話に出て来んね。すぐ戻る。」

「うん!早く戻って来てね!」



手を繋いでいた歩美ちゃんはもちろん、横に並んでいた蘭ちゃんと園子ちゃんにも断りを入れて列から離れる。
一瞬、前に並んでいた沖矢昴とコナンくんから視線が届いたが、それはすぐに消えたので俺も気にしないことにした。



「ヨォ、久しぶりじゃねぇの、雲雀。」



電話の相手は、雲雀恭弥だった。


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