▼ Gli occhi per attaccarsi.

『…ずいぶんと賑やかな場所に居るみたいだね、雄魔。』



電話に出ると、相手…雲雀は不機嫌そうな声のトーンで言葉を発した。



「今、任務遂行中に親しくなった子どもたちに捕まってんだよ。」

『キミは相変わらず、子どもに好かれるし子どもに甘いんだね。』

「かもな。雲雀も変わんねーなぁ。」



不機嫌そうな雲雀に対して苦笑いが出て来るが、なんだかんだで中身が変わってきたこいつのことだから、恐らくは拗ねているだけ…なのだろう(たぶんネ)。

すこし離れた場所に居る子どもたちに視線を送っていると、電話越しに「子どもに好かれるし子どもに甘いんだね」と言われて口元が緩んでしまう。
こいつは人に興味がないようで、実はしっかりと周りを見ている。

本当、雲雀ってばツンデレだよね〜。
そんなこと言ったら本気で殺されそうだから、絶対に言わないけど。



『…そう言えば、マリーナファミリーが並盛でも動き出したこと…知ってる?』

「マリーナ…。」



「そう言えば」と話しを切り替えたところで、電話越しでも伝わるほどに雲雀の空気がピリッとしたものに変わる。
滅多に電話などして来ないこいつが、と思うと何か別の用があることは俺も見越していたけど…。

まさか、マリーナファミリーとはね…。
米花町だけでなく、知らない間に雲雀の並盛にまで手を出すなんて…。
大人しくしている、と思って俺も監視指示を怠り、油断していたらしい。



『並盛に来ていたのはただの草食動物…わざわざ僕のテリトリーに来たんだ。恐らく、奴らは僕の"様子"を探っていたんだと思うよ。雄魔、派手に動いたね?』

「うっ…。」



雲雀の言葉に、思わず口吃る。
マリーナが動き出し、雲雀の様子を伺ったということは、つまり"他ボンゴレファミリーの動きに勘付かれた"ということと変わりない。

俺が日本へ飛び立ち米花町(ここ)で動いている…ということ知っているのは、何も綱吉だけではない。
守護者同士の情報がリークされることはすくないが、今回は内容が内容だからほぼ全員が知らされている(ランボは知ってるのか知らないケド)。

まあ、そういうことで俺が狙っているファミリーが雲雀の様子を伺ったってことは、俺が何かやらかしたってことに自然と繋がってしまうわけで…。
え、それ結構失礼じゃね?
もし俺じゃなかったらとばっちりだし!
いや、今回は俺なんだけどネ!?



『まあ良いよ、彼らがどれだけ群れてここへ来ても僕が咬み殺すだけだから。』

「へーへー。無敵な味方デスコト。」

『キミ、ばかにしてるの?』

「滅相もございません〜。」



電話口で「咬み殺す」が聞こえて来た瞬間、「あー来たな」と悟った。
いつもの戦闘狂の戯言だし、特に気にすることはないか。
さっきまでは説教モードだったはずなのに、本当にこいつは戦闘のことしか考えられていない戦闘狂だ、恐ろしい。

「じゃー俺はもう戻るかんね」と言って電話を切ろうとしたとき、背中を刺すような視線を感じた。
急いで振り返るもその瞬間に気配・視線も消されてしまったので、俺を見ていたであろう人物を特定出来ない。



『…なに、どうしたの。』

「え?あ、あー…いや、もーそろそろ順番来んなーって思って。」

『…そう。まあ、気をつけるんだね。』

「…おうよ。」



プツッと切れた雲雀との通話。
最後、俺が何かを誤魔化したということに雲雀は気付いたらしい。
本当に、いろいろと目敏い奴だ。

それにしても、さっきの視線…。
殺意や敵意なんかではない、恐らくあれは"観察"の目。
そんな視線は沖矢昴やその他もろもろで頻繁に浴びているから慣れてはいるが…え、まさか復讐者?


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