▼ Faccia a faccia con il nemico.

さて、どう切り抜けるか。

多少の幻術を得ていると言っても、それは本当に多少に過ぎない。
骸ほどの術士であれば、憑依したりマインドコントロールをしたりして、この場から不自然なく抜け出せるんだろう。

けれどお生憎様。
俺は六道輪廻なんて持ってやいないし、それでなくとも、自分に変装したような幻術を掛けることしか出来ないんだ。



「っ!」

「な、なに…!?」

「爆発したわよ!」



どうすりゃいいんだよクソ…と頭を抱えていると、遠く離れた場所で爆発があったらしく、軽く地面が揺れる。
その爆発に敏感な反応を見せたのは、言わずもがな"目暮警部たち"だった。

なるほど、警察がマークしていたのは、恐らくは爆弾。
そして、俺に向けられていた視線から考えてみると…。
この何も考えられていないような馬鹿さ具合、もしかしたらではあるが、マリーナファミリーの仕業かもしれない。



「(おいおい…勘弁してくれよな…。)」



このどうにも抜け出せない状況で事を大きくさせられるのは、少しばかり困る。
せめてあのふたりが首を突っ込んでくれたら良いんだけど…うん?

あ い つ ら い な く ね ! ?

おいおいおいフザケンナヨ。
俺を監視したいんじゃないの?
したいんじゃなかったの!?
なんで消えてんだよ!

俺の予想が正しければ、あいつらは爆発があった場所に行っているはず。
しかも、周りの子どもたちも気付いたのか「あれ?コナンくんと昴さんが居ませんよ?」なんて言っちゃってる。

やめてー。
こんな血生臭いマフィア同士の抗争なんかに、俺は清い子どもたちを放り込みたくないんだよー。

子どもたちには「俺ちょっとトイレ行ってくるから代わりに並んでて!」と頼んで俺も列から離れさせてもらう。
あのふたりが居なければ、ここから抜け出すことなんて簡単なんだよ。



「ったく…せっかく(子どもたちの)気晴らしに来てやってんのにさあ…。」



列から抜けて、やって来たのは比較的人が少ない穴場っぽいところ。
そこに突っ立っていれば、予想通りマフィアの匂いをプンプン振り回す奴らの気配が複数の場所から感じた。

あ、これ匣使われるな。

そう思ったと同時に、俺も匣を開口し、匣からだと思われる攻撃が飛んで来た。
俺の防御専用匣、あんまり耐性ないから連続攻撃はやめてくれよー。



「おら、さっさと姿現せや。マリーナのキッズども。」

「…やはり、我々の存在はボンゴレの死神にはバレていましたか…。」

「まーな。確信は無かったけどよ。」



マリーナの名を出し、姿を出すように言うと次々に姿を現した。
敵さんの人数は20くらいか。
まあ、名を晒したくないマフィアで考えたらこの場所だと妥当な人数、かもな。

奴らの前に出て来たのは、その中でも幹部と思わしき人物。
ボスらしき者の姿は無いので、言っちゃ悪いが当て馬のようなものか。

だって、なあ?
ボンゴレ最恐と恐れられる雲雀恭弥とボンゴレの紅蓮の死神と呼ばれている俺が居るジャッポーネで、最後の切り札になり得る奴らを初っ端に出すか?
普通に考えたら、捨て駒以下だろ。



「あの爆発、おまえら?」

「いえ…あれには我々は関係してませんよ。あれらはすべてゴミの仕業です。」

「へー。おまえらなんかにゴミ呼ばわりされてるなんざ、可哀想を通り越して哀れなもんだな。」

「…油断していると、死にますよ。」

「おう。やってみろ。」



相手のリングに、炎が灯る。
それに乗るように俺も炎を灯したところで、とある気配に気付いた。

…これは、もしかして。

クソ、と心中で舌打ちをしたあと、使う予定のなかった匣に炎を注ぐ。
匣からは濃い霧のようなものが溢れ、一気に俺たちの視界を遮ったかと思うとそれは一瞬にして晴れた。

まったく、面倒なこった。
あまりこちらの領域には、足を踏み入れないでもらいたいよね。



「っなんだ…!?」

「俺の中の小さな霧属性の炎で、外部からシャットアウトさせてもらったよ。躾のされてないワンコが邪魔なもんで。」



当然、奴らは俺を闇属性と思っているので、この霧属性としか思えない匣には戸惑いを隠せないでいるらしい。
それに関して省略を入れつつ説明してやるあたり、俺ってばちょー優しいよね。

躾のされてないワンコ…恐らくは沖矢昴と江戸川少年に、こちらが見えないよう匣を使って簡単な幻術を掛けた。
これから始まる惨劇は…あんまり、見てほしくないからねぇ。



「じゃあま、サクッとやっちゃうか。」



俺は再度、濃厚な闇属性の炎を灯した。


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