▼ L'aspetto del collega.

それからは早かった。
周りに散らばるのは、無惨にも血を撒き散らした奴の部下ども。
既に事は切れているので、もちろんピクリとも動きはしない。

ああ、なんて、滑稽なんだ。
やはり俺は、綺麗じゃない。



「クソ…ッ!」

「あんたにはいろいろ訊きたいことがあるんだよネ〜。だから殺しはしないよ。まあそれも、"まだ"殺さないってだけの話しなんだけどサ。」

「ふざけるな!!」



深傷を負い、あらゆる場所から血を流すのは先ほどまで紳士的に話していた奴。
余程苛立っているのか知らないけれど、紳士的な言葉遣いはどこに消えたのか。
多少乱暴な言葉遣いになっていた。

グルル…と唸るキャロルの頭を撫で、愛銃をくるりと回す。
もう一発ぶち込んでやっても良いんだけど…やり過ぎて出欠多量、そのまま死亡なんてことになっても困るなあ。
取り敢えずおまえ、血出し過ぎだろ。

今にも倒れそうなそいつに近付くと、奴は情けなくも身体をビクリと震わせた。
本当、思うように動けないで絶望が滲む目で見て来るターゲットほど、滑稽だと思える存在はなかなかないと思う。



「おまえらのこっちでの基地、吐いてくんねーかなあ?」

「誰が教えるものか…!」

「はーん。弱っちいおまえも、仮にもマフィアってことか。」



視線を重ね、小さく笑いながら日本での基地を教えてもらえないかと言えば、奴は力強く睨んできた。
仮にもマフィア、だから仲間の…ファミリーの居場所は吐かない、ってことか。

さて、俺もトイレだと言って抜け出したわけだし、俺が霧属性じゃないからこの霧も長いこと続きはしない。
つまり、このままこの状況が長引いても困ることしかない、ということ。

どーすっかなあ。
そう思って頭に手をやったときだった。



「…ナーイスタイミング。」

「は…?」

「やはり気が付きましたか…雄魔。」

「まーね。俺の霧を抜けるなんて、おまえくらいしか出来ないデショ。」

「お、おまえは…!」



ふらりと、俺が張った霧の結界が揺れたのを感じた。
それが誰の手によるものか、くらい俺にはすぐに解る。
こいつのタイミングの良さに、思わず頬が緩んで笑みが溢れた。

素晴らしいほどのタイミングで姿を現したのは、ボンゴレ霧の守護者。
そう、六道骸だった。

あれほど骸は来なきゃ良いと思っていたけど、拷問のスペシャリストが来てくれたとなれば状況は変わる。
だから思わず、笑みが溢れたのだ。



「俺、ガキどもと一緒だからあんま長時間離れてると怪しまれるんだよネ〜。」

「…つまり、ここからはすべて僕に任せる、と言いたいんですね?」

「ご名答〜。」



ここから離れたいことを伝えれば、骸は呆れたようにしながらも、上手いこと状況を読んでくれた。
それに対してパチパチと手を打てば「クフフ…」と笑い出したのでやめる。
絶対六道輪廻使われるところだった。

俺は骸にすべてを任せ、キャロルを匣に戻してから人気のないところで霧のベールから抜け出す。
たぶん俺が離れたらこれも消えるんだろうけど、まあそこは骸がどうにか誤魔化しているだろう。
あいつの幻術は、ヴァリアーの術士たちよりも数倍上手なのだ。

あとは任せたよ〜と心の中で呟いて、沖矢昴とコナンくんに遭遇しないよう、子どもたちが待つ列に戻る。
あ、もしかしてこれ、戻ったと同時にジェットコースター乗る、とかないよな?



「ぎぁあああああ!!!」

「あはははは!」



俺の予想はフラグだったらしく、人混みを駆け抜けて列に合流するとちょうど順番がやって来たらしい。
そのまま歩美ちゃんに引っ張られ、コースターに座った。

ちょ、これ激し過ぎるよ!?
普段ならまだしも、久しぶりの匣を使った争いで、炎が原因で疲れている身体にこれはしんどいな!?

歩美ちゃんの楽しそうな笑い声を隣で訊きつつ、俺が白目を剥いていたことは言うまでもないだろう。


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