▼ Uno studio di ciascuno.

side.Vongole



あの日あのあと、ジェットコースターに乗って激しく揺られ、すっかり具合を悪くしたにも関わらず帰りも長距離運転して無事に帰宅した(俺は無事じゃない)。
俺がんばったよ。
誰か褒めて。



「…なるほどネ〜。」



とまあ、冗談はさておき。
マリーナの下っ端幹部を任せた骸とは帰宅して数時間後に合流し、今こうしてテーブルを挟んで話しをしている。

持っている紙をペラリと重力に沿わせ、そのままテーブルにひらりと舞わす。
骸はそれをチラリと見やると、特に興味も言うこともないのか、視線を下げた。

今回、骸が持って来たのは、マリーナファミリーの今のアジトの情報。
それから…赤井秀一についてだ。



「彼は敵対組織から殺され死亡…となってますが、どうやら生存していることは確かなようですよ。」

「なるほどねぇ。」



骸から詳しく説明され、早くも本日2回目の「なるほど」が出る。
骸曰く、確かに死亡としていろいろと手続きされているらしいけど、そこに見える小さな穴をこじ開けて赤井秀一が生きている、と言う結論を出したらしい。

そうかそうか。
赤井秀一は生きていたのか。
ありがとう神様。
俺はまだ幽霊を見たわけじゃなかった。



「とは言え、彼は雄魔からの話しだと雲隠れ…つまり、姿を変えて何処かに生存している可能性もありますから。」

「良いじゃん。死んでねーんなら、俺は万々歳よ?幽霊じゃないって素敵。」

「職場上ではあれど、マフィアに関わっているんですよ?しかもその赤井秀一に姿を見られた。キミはいつものことながら、その自信故に警戒心が薄い。」

「あー…そういや、そだね。」



幽霊じゃなかったヒャッホーイ!
なんて脳内で煌びやかなカーニバルが行われているところで、骸から呆れを含んだジト目を向けられる。

警戒心が薄いとは言われるけれど、赤井秀一を警戒したところで相手はカタギの人間だし、ただのFBI。
俺たちが相手にしちゃいけない界隈の人間なんだ、どのみちこっちから手が出せないんなら気にしたところで無駄。



「…で、沖矢昴と安室透だけど。あっちで調べてくれた?」

「ああ、彼らですか。調べましたよ。嘘で塗りたくられた個人情報をね。」

「は?嘘?」



んー、と一度背伸びをして、そう言えばと前にこっそりと珍しくも骸に直接頼んだ要件を思い出す。
それを訊けば骸も調べていたことを思い出したのか、「ああ」と言ってあのすこぶるムカつく、皮肉の込められたような笑顔を向けられた。
たぶんこれは俺に対しての笑顔じゃないんだろうけど、ムカつくわ。

いや、今はそれよりも。
骸が言う、「嘘で塗りたくられた個人情報」とはどういう意味か。
一般人であればそんなことを言うはずがないが、そうやって言う…と言うことは何かしらおかしな部分がある、のかネ。

マフィアじゃないんなら、それこそ赤井秀一生存立証レベルで大歓迎だ。
むしろ興味ないから、マフィアじゃないならどうでもいい!
それの方が平和に終われる!



「他にも探るべき情報があるのでザックリとしか見れず、真実が書き記されているはずのデータは時間不足で見付けられませんでしたが。」

「あーね、なるほどね、偽物って可能性があるってこと。うん、よく解らん。」

「…つまり、"沖矢昴"と"安室透"は実在しないはずの名前…偽名です。真名は調べがついてませんが、ただの人間でここまでするのはおかしいですから。用心するに越したことは有りませんよ。」



そう言ってから、骸は「マリーナの幹部をイタリアに送るため失礼しますよ」と言って家から出て行った。
まあ、出て行ったと言うか、消えたって言った方が正しいんだけど。

沖矢昴と安室透…。
引っかかるとは思っていたけど、まさか偽名だったとはねー。
マフィアじゃないならどうでも良い、とは言ったけど、ごく普通の職種じゃないのは明らかだし。
まあ、不必要に俺のこと探ったりしないんだったら、別にどうでも良いことに変わりはないんだけどな。

つーか報告に来るんなら幻術使って来てんじゃねぇよ、このパイナップル頭!


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