10,000hitリクエスト

「ぶっちゃけ、名前はクラスの男子で誰が好み?」
「唐突だね…」

私たちA組女子の土曜の夜はいつも決まっている。毎週代わりばんこに誰かの部屋にお菓子を持ち寄っておしゃべりをするのだ。最初の頃は1階の共有スペースで話し込んでいたりしたのだ。けど以前私がそこで眠りこけて朝を迎えてしまったことがあったため(飯田君にハチャメチャに怒られた)、誰かの部屋なら寝てしまっても心配ないよねということになり、現在に至る。今日は百の部屋だ。天蓋付きのベッドになんて初めて寝るから、来る前からわくわくが止まらなかった。そして百が砂藤くんに頼んでおいてくれたクッキーと紅茶を用意してくれて、女子会は始まった。ベッドの上でクッキーを食べるなんてことは流石にしなかったけれど。

最初は授業のこととかそれなりに雑談をしていた。そこからどんどん話が逸れ、A組の男子で誰が良いかという流れになったのだ。これでこそ女子会というかなんというか。

「男子かぁ……優しいのは障子くんとか尾白くんとか…イケメンなのはやっぱり轟くんだよね」
「だよねだよね!」
「透は轟推しだよね」
「うん!百ちゃんもじゃない?」
「はぁ…期末テストですごく助けられたので……そうですわね」
「轟が一歩リードかぁ」
「あとはー単純に切島はイイやつ!」
「場を明るくしてくれるもの。助かるわ」
「ある意味上鳴もじゃない?」
「名前ちゃんと耳郎ちゃんは結構上鳴くんと仲良いよね」
「そういうお茶子は、やっぱり緑谷くん?」
「な、何!しらんしらん!!」
「うおー、真っ赤」
「これはアレですなぁ三奈さん」
「アレですなぁ名前さん」

によによと三奈とお茶子を見ながら下卑た笑いを浮かべれば梅雨ちゃんにこら、と窘められる。ほどほどにしないと怒られてしまいそうだ。けど、こういう女子と男子の恋バナ的なのは盛り上がることこの上ない。

「緑谷ちゃんは入学当初と随分変わったわ。頼もしくなった」
「へぇ〜。最初はちょっと頼りなかったの?」
「うーん…未知数って感じかなぁ。個性把握テストで指バッキバキにした時はビビった」
「今思えば、入試ン時もそうだったなぁ」
「あ、入試の時から知り合いなの?」
「うん。助けてもらって。体育祭でも出たあの大型ヴィランを一発で壊しちゃったんだよね。もう腕がボロボロに砕けてて凄い色だっ」
「えぇぇー!テレビで見てたけど、すごいな緑谷くん…体育祭も凄かったもんね」
「それ言ったら爆豪は1位だよ」
「いやあれはまた別だよ…」
「そうですわね……私は常闇さんに完全に負けてしまいましたし」
「ウチも!リーチ広いって強いよね」
「個人的には障子くんが戦ったらどんな感じか知りたかったなぁ」
「確かに。索敵系だけど、腕っぷしあるもんね。けど近距離型だからやっぱ常闇くん優勢かな」
「常闇さんも爆豪さんとの戦いは相性の問題が大きいように感じられましたわ」
「私も爆豪くんに叶わなかったなぁ〜…」
「あれはチートだよね。ウチ的には甲田の戦い方は中々えぐいと思う」
「動物はね…かわいい猫とか犬とか差し向けられたら勝てる気がしない」
「確かにそうですわね……」
「…私も来年、体育祭出たいなぁ」

皆が当時を思い出しながら語る姿を見るとやっぱり羨ましくて。そのとき私は田舎の高校で雄英体育祭を見ていた観客の一人だったから。今この場で皆との差を何となく感じてしまう。それにすぐさま気づいてくれたのは梅雨ちゃんだった。

「大丈夫よ。あと2年あるわ。次は優勝目指しましょう」
「…うん、そだね。新技も会得できそうだし!」
「えぇ!名前、いつのまに!」
「ふふふ、楽しみにしてて?」

これまでの皆の中に私はいなかったけれど。これからの皆の中にいれれば嬉しいな。少し気恥しいけれど、優しくて温かいみんなといれて、雄英に来られて良かった。心の底からそう思えた。




「あ、峰田くんは?」
「どうでもいいかな」
「そうですわね」
「峰田ちゃんはまずは行動を見直すべきね」
「相澤先生もっと怒ってくれていいのにね」
「あはは!たしかに!」


うん、がんばれ峰田くん!


           


ALICE+