10,000hitリクエスト

相澤先生は無駄が嫌いな人だ。だけど、こればかりは仕方ないと了承してくれた。

「ほ、本当に良いんですか?!」
「校長が言うなら仕方ねぇだろ」

その代わり、1週間毎日全員居残りだからな

気怠げに告げた先生に勿論ですとも!とクラス全員で叫んだのが昨日のこと。なんと校長が夏合宿を強制終了された私達にポケットマネーで招待してくれたのだ。太っ腹!そして遂に今日、A組皆と相澤先生、オールマイトと共にあの日本で最も有名なネズミのいるテーマパークへ赴いた。

「名前ー!アトラクション何乗る?!」
「絶叫系には乗りたいな!三奈は何が良い?」
「私はね、1回転するやつ!!」
「いいねいいね!乗ろう!!」

移動のバスの中ではこんな風に皆が浮かれに浮かれていた。何せ日本最大級のテーマパーク。あの夢に満ち溢れた国に行けるのだ。胸が高鳴らないわけが無かった。

「てか、オールマイトがパークいたらパニックにならないかな?緑谷くん分かる?」
「お、オオオールマイトは…こっそり僕達の近くにいてくれるみたいだよ……移動もバスの後ろの車だって」
「そうなんだ。けどこっそりなんて言っても目立つよね」

三奈も一緒に確かにーなんて笑うと、ほっとした表情を浮かべる緑谷くん。それにしても凄い噛んでたな。憧れのオールマイトと一緒に遊園地だなんて、緑谷くん緊張しているのかな。
そうこうしているうちに、バスは何事もなく無事にテーマパークへと到着した。

「はい、じゃあ自由行動」
「よっしゃあ!行こうぜ!」
「上鳴たちどこから廻る?」
「やっぱ絶叫っしょ!」

だよね、と笑う頃にはみんな数人に分かれていて、少し先で三奈たちが早く早くと私を呼んでいた。小走りで彼女達の元へと向かう。地図を覚えてきたという百を先頭に私たちはゲートをくぐった。私達が目指すのは入り口から一番遠い、先ほど話していた回転するコースター!途中で過ぎていくアトラクションを見ながらこれにも乗りたいと話して盛り上がった。そうして、しばらく歩いて行くと段々古代遺跡の雰囲気が漂ってくる。時折聞こえる色んな所からの叫び声に身を震わせた。

「ここですわね」
「わ、上鳴達も乗るんだー!」

あー!と透が指差す方向には少し前のところに並ぶ上鳴や瀬呂くん、爆豪、切島くん。おーいと手を振るとあちらも気づき、振り返してくれた。こういう風に分かれた別グループとたまたま会えるのも楽しい。いつも会ってるはずなのに、久しぶりに会えたみたいな高揚感が生まれた。

「ふふ、先越されたね」
「よし、じゃあ次どこ行くか決めちゃおう!」
「そうですわね。ここからですと……」

皆でどこから攻めようかと話しているうちにそろそろ自分達の番が近づいてきた。カタンカタンと移動してくるコースターには丁度上鳴達が乗っていた。奇跡的というか偶然って凄いなぁ。

「爆豪、怖くなかった?」
「舐めてんのか」

向こう側を歩く爆豪に話し掛ければ、日常的な罵りをされるけれど普段よりマイルドだ。きっと爆豪もこの雰囲気にアドレナリンが出まくっているのだろう。

「いよいよだね…!」
「手から変な汗出てきた…!」
「溶かしちゃだめだよ?!」

隣の三奈が不穏な事を行ったと同時にでは、いってらっしゃーい!というスタッフさんの声が重なった。それを合図にゴトンと動き出すコースター。行きの登りの道を上がっていく時間はやけに長く感じて、心臓が飛び出そうだった。そして、間髪入れずに襲い来る何度も上下する道に重力と遠心力で身体があちこちへと飛んでいきそうだった。自然と叫び声もあがる。

「ああぁーーやばいやばいー!!」
「やばい名前くるよくるよ!!」

ボルテージも最高潮になった時、目の前のコースが斜め上へと続いていた。あっ、と思う頃には身体は宙返りしていて、強い重力で逆さま頭は下に引っ張られるみたいだった。
気付いた時にはもう終わっていて。透は速すぎて短く感じた!と連呼していた。百は初めて乗ったからか、これが…!と感動と少しの疲れを見せていた。そんな顔も美人だから羨ましい。

コースターから降り、じゃあ次のとこね!なんて話をする。まだまだこの国は広いのだ。


________________

「カウボーイにスペースヒーロー!」
「13号先生思い出すよね」
「あれ、障子くん」
「彼なら索敵能力ですぐに探しだしてしまいそうですわね…」
「勝てる気しなーい!!」


________________

「わ、見て!パレード!」
「!マッキーの隣!!」
「えっ、オールマイト?!」
「あそこファンサービスにうってつけなのかしら」
「みんな見えるもんね…!」
「世界観壊してないかしら…」
「むしろ派手だから馴染んでるわ」

________________

「いい匂いしてきたーっ」
「ポップコーン!食べたーい!」
「ストロベリーがいい!!」
「…砂藤くんに言ったら寮でも作ってくれないかな」
「名前天才?!」
「何か砂藤なら作れそうだよねー」
「研究熱心ですものね」
「ふふ、百と一緒だね」
「一意専心、ですわ」

________________

「この玉転がすゲーム、どうしても無理だ…!」
「三奈の気迫すごくて他のお客さん寄ってこないよ。キャストさん苦笑いだよ」
「あー、また!!悔しい〜!」
「何か聞き覚えの声すると思ったら…意地になってしてるね」
「あ、尾白くん!」
「尾白?!助けて!ヘルプ!尻尾ならなんかコントロールできそう!!」
「いや尻尾なんかでやらないでしょ、普通…」

________________

「そういえば相澤先生見ないね」
「どこかで寝てたりして」
「いや…流石に…」
「意外と満喫してるかもよ?」
「カチューシャ被ってたり?」
「想像できないわ…」
「あ、噂をすれば黄色い寝袋がベンチに」
「あぁ〜、キャストさんに絡まれてるのに一貫して無を保ってる…!」
「中々あのキャストさん会えないのに!贅沢だー!!」

________________

「このホラーなマンション、常闇くん住めそう」
「馴染みそうですわね…」
「いたりして…!」
「それにしても、いい音だわ」
「響香の目の付け所そこなんだ」

________________

「飯田くんだ!」
「あぁ、君たちもここか」
「委員長、わたし餃子のパン食べたい」
「…食べればいいだろう」
「もちもちのパン生地の餃子のパン食べたい」
「強請るな」
「ジューシーな肉汁あふれる餃子のパン食べたい」
「しつこい」
「…飯田って、名前の扱いちょっと慣れてるよね」
「何度もからかわれているからな」
「夫婦漫才しようか飯田くん」
「しない。早く皆のもとに戻れ。ハウス」
「冷たいっ!」

________________



すっかり閉園の音楽が鳴り響く。沢山お土産も買ったし、写真もたくさん撮った。これでもか、と満喫できた。

「ふふ、校長先生さまさまだね」
「ねー!けどまだまだ遊び足りなーい!!」
「3日ずつくらい遊びたいよね」

帰りのバスの中は最初こそ大盛り上がりだったが、1時間もしないうちにみんな疲れで眠ってしまっていた。私もうとうととし始めた頃、とんとんと肩を叩かれる。何事かと振り返ると後ろの席の上鳴だった。

「おつかれー」
「おぉー…上鳴じゃん。なんか久しぶり?」
「いや会っただろ」
「ふふふ、そうでした」
「寝ぼけてんな…?」
「んー…そんなんでもないよ。なんか用あったんじゃないの」
「や、あのさー…」

しどろもどろになる上鳴。なにか頼みごとでもあるのかて察すると、予想外の言葉を零される。

「今度、さ。どっか遊びいかね?」
「いいけど…?」
「あー、じゃあ、再来週末あたり」
「服でも買いたいとか?」
「や、えっと、」

歯切れの悪い上鳴に眠気のある私は少しだけ強めにはっきり言っていいのにと促す。それを聞いて上鳴は意を決したように見つめて言い放った。


俺とデートしてくんね?



眠気、飛んじゃったじゃん、ばか。







           


ALICE+