フィニがシエルに尋ねる。
「マリアさんはどんな方なんですか?」
「年齢は僕より2つ上の15歳。
ミロワール学園の出身で飛び級して卒業。今はクラージュ医科大学に通ってるよ」
シエルが答える。
「ミ、ミロワール学園って超名門のお嬢様学校って聞いたですだよ」
メイリンは驚く。
「それにしてもマダムレッドにそっくりだったな」
バルドは言う。
「あぁ。姉さんはマダムレッドに憧れてるからな……あとは…ミロワール学園時代は校則違反したり、ペナルティのマリアとして有名だったみたいだ。それと留学経験も豊富で何カ国語も話せるし、フェンシング、フィギュアスケート、バレエ、ピアノ、ヴァイオリン、絵画でも常にトップクラスで“コンクール荒らし”なんて呼ばれてたな」
「ペナルティのマリアは余計よ」
ひょっこりマリアが表れる。
「姉さん…いつの間に」
「さっきから居たわよ。あと、留学ってのは名ばかりで遊びに行ってる感じよ」
「凄いな!流石は俺の妹!」
ソーマが手を叩く。
「そういえば、大学の方から荷物が届いたぞ」
玄関ホールには大量の箱や埃を被ったピアノが置いてあった。
「全部私の部屋に運んでくれる?」
「俺も手伝うぞ!」
「お止め下さい、ソーマ様」
慌てるアグニ。
「これもいい男になる為の勉強だ」
ソーマは張り切って荷物を持つ。
「このピアノも運ぶんですよね」
フィニは一人でピアノを軽々とマリアの部屋へ運ぶ。
シエルを除く男性陣達は手際よく荷物をマリアの部屋に運び、あっという間に全ては片付いた。
「姉さん、トロフィーはリビングに飾ろう」
シエルの提案により、マリアが残した数々の功績のトロフィーはリビングに全て飾られた。
豪華なディナーを食べた後、シエルの部屋にマリアがやってきた。
「シーエール」
「何で突然帰って来たんだ?姉さん。大学で何かあったのか?」
「何もないわよ。大学の寮も飽きたから戻って来ただけよ」
「そうか」
「…シエルもじいやも元気そうでよかった」
「…姉さんも元気そうでよかったよ」
メイクを落としたマリアの素顔は父親にも、母親にも似ていた。
昔より似ている。
父親と同じ泣きボクロ。
母親と同じ瞳。
「ねぇシエル」
「何だ」
「シエルの執事のセバスチャンって何処の方?」
シエルは動揺する。
そう、マリアは賢いだけではなく勘がいいのだ。
「あの方、俗に言うイケメンに当てはまるけど、立ち居振る舞いとか完璧すぎてなんだか人間っぽくないような…あと、あの笑顔には裏の顔なんかあったりして」
冗談っぽく、笑いながらマリアは言った。