5/続・お嬢様と使用人

ファントムハイヴ邸の庭で薔薇を見ているマリア。




真っ赤な薔薇。




大好きだったマダムレッドを思い出す。




しばらく薔薇を眺めていると



強い風が吹く。




麦わら帽子が風に乗って飛んでくる。





マリアは麦わら帽子をキャッチする。

「うわーん…マリアさま〜!」


「どうしたの?フィニ」


フィニが走って来る。


「帽子が風に…」


「帽子って、これ?」




キャッチした麦わら帽子を差し出す。




「はい!これです!凄く大事な帽子なんです」




帽子を被るフィニ。




「マリア様、ありがとうございます!」



「いえいえ。凄く大事な帽子なのね」



笑うマリア。




「それとマリア“様”じゃなくてマリア“さん”とかでいいわよ。私たち歳近いみたいだし」


「僕、16歳です!本当にいいんですか?」


「私と一つしか変わらないのね。いいわよ。堅っ苦しいの好きじゃないの、私」


「…じゃあ、マリアさんで」




フィニはにこりと笑った。




マリアも優しく笑う。


その後マリアは屋敷内をうろつくと、台所へ入る。




台所にはバルドとスネークが居る。





「お嬢ちゃん、こんな所に来てどうしたんだい?」


「暇だからお屋敷を探索してるの」





バルドのそばにはキャンディシガレットの空の缶。
缶を覗くマリア。



「何これ?中身入ってないじゃない。捨てちゃいなさ…」


「お嬢ちゃん!待ってくれ、これは大事なモノなんだ」


「?」


「坊ちゃんにもらったんだ。だから空になっても捨てられなくてな」


「シエルに…そう。ごめんなさいね。はい。水のそばに置いておくと錆びるから気をつけた方がいいわよ」


「おう」




キャンディシガレットの缶をバルドに返すマリア。

食材の下ごしらえをする為に野菜の皮を剥いているスネークの元へマリアがやってきて一緒に野菜の皮を剥く。




「…エミリーがお嬢様はこんな事しちゃダメよって言ってる」


「私こういうの得意なのよ。それより蛇ちゃんには名前があるの?」


「ダン、キーツ、ブロンテ、ウェブスター、エミリー、オスカー、ワーズワス、ゲーテ、ワイルドって言うってみんなが言ってる」





エミリーを首にかけるマリア。




「可愛いわね」


「…私達が気持ち悪くないの?ってエミリーが言ってる」


「気持ち悪いって、言われた事あるの?」





頷くスネーク。




「私は蛇ちゃん達は可愛いと思うし、気持ち悪いって言う人が気持ち悪いと思うわ。可愛いわよ、みんな。スネークもうちのフットマンなんだからシャキッとしなさい」





スネークは照れた。



数日後、すっかり蛇達と仲良くなって数匹首に巻き付けたマリアがバルドの元へやってきた。





「どうしたんだい?お嬢ちゃん」



「これ、キャンディシガレットの缶に入れておいたら?」




袋に入ったキャンディが数個。






「ありがとうな!お嬢ちゃん!」






笑うバルド。



そんな光景を見て笑うスネーク。






マリアも笑う。




「せっかくなんだからみんな仲良くしましょうね」



「そうねってエミリーも言ってる」








使用人達とマリアはすぐさま打ち解けた。