付き合いで夜会に参加する事になったシエル。
会場の宮殿に辿り着くまでの馬車の中で、深いため息をつく。
ため息の原因は憂鬱な気分だからだ。
宮殿に着くと大人達が華麗に踊っている。
シエルは壁にもたれ、華麗な踊りを退屈そうに眺めていた。
しばらくすると、シエルの側に、シエルと同い年位で、ブルーのドレスを身に纏い、月のようなブロンドの髪にはブルーのヘッドドレスをつけている少女が居た。
目が合った。
「僕はシエル。君の名前は?」
「…私はマリア」
少女は侯爵のご令嬢。シエルと同じく付き合いでこの夜会に参加したが、人付き合いやダンスが苦手で輪に入れず、壁に寄りかかって居たらしい。
マリアはシエルと同じで学校には通わず、お屋敷に家庭教室を招いて勉強したり、ヴァイオリンのレッスンをしていると言う。
話が弾む。
何だか似た境遇。
いつの間にか二人の距離は縮まって居た。
マリアは、時計を気にしていた。
時計の鐘が、12時を知らせる。
「シエル様、馬車が迎えに来たから私は帰らなきゃ…せっかくお話できたのに、ごめんなさい…」
寂しそうな顔して、宮殿の扉を開けて階段を降りる。
すると、シエルはマリアの腕を掴んだ。
「帰らないで」
シエルは真っ直ぐにマリアの目を見つめ、そう言った。
マリアは足を止めた。
「マリア、君ともっと話がしたい」
マリアは笑顔で頷いた。
月明かりの下、ブルーの衣装に身を包んだ少年と少女はぎこちない足取りでダンスを踊っていた。