▼▲
【陸】



 写し。本当は気付いてる。
まんばちゃんと絆を深める回。
審神者が演練会場で前任審神者の関係者に傷付けられた直後辺りを予定してた。
俺は写しだから〜のくだりを愚痴って逆に怒られて泣かれるという展開。
▼以下、ちょっとだけ頑張って書いてた文章なう。


『例え、写しだろうと、今この本丸に顕現する…此処に居る山姥切国広は貴方しか居ない。他に代わりが居るだなんて、幾ら分霊だから代用が利くだろうだなんて、言わないで。今後一切、二度と言うな。二度と口にするな。』

 哀しさと怒りを綯い交ぜたような表情をする主。
泣くのを必死で堪えているかのように思えた俺は、焦ったような口調で狼狽えた。

「な…何で、アンタが泣くんだ…?何で、俺なんかの為に……っ、」
『“俺なんかの為”じゃない!!“俺の”だから…っ、俺の大事な一振りだから言ってるんじゃないか!この…っ、馬鹿ァ!!』

 他に罵倒する言葉が見付からなかったのか、一度言葉を詰まらせた主。
手を振り上げかけるも、ふるふると震わせるだけで、グッと拳を握り締めると溜め込んだ物を吐き出すように強く振り下ろした。
 恐らく、俺が元々は黒本丸出身で、痛みに耐え抜いてきた事を知っているから、其れを怒りに身を任せかけた瞬間にも頭を掠めたのだろう。
 今の主は、優し過ぎる程に優しい。

「…おい、そんな風にしていたら筋を痛めるぞ…。俺の事でアンタが傷付くのは見たくない。……すまない、もう“俺なんか”がとは口にしないから…その、泣かないでくれ。アンタに泣かれたら…どうしたら良いのか分からない…。」
『………ったら…、』
「え…?」
『…だったら、少しでも良いから、笑え。偶には、明るい表情を見せてみろ。…そしたら、俺は泣かないでいてやるから…。』
「…………。」

 二の句を告げれなくなった俺が黙り込むと、今にも溢れそうにあった眦に浮かぶ涙を乱暴に拭った。
そして、俯かせていた顔をもう一度上げ、俺を見た。

『ほら…泣いてないからさ。』

 未だぎこちない笑みを浮かべるが、決して俺を傷付けないように手を差し伸べてくる。

「――…嗚呼、そうだな…。」

 だから、俺も、今までずっと背負っていた負い目を…肩の力を抜いて。
そっと控えめに小さく笑んだ。
僅かに口角を上げただけでも、彼女は大層嬉しそうに笑った。
 そして、思った。
俺は、アンタのその笑顔を守りたいのだと…。
其れが、此れからもこの本丸で生き、この先も戦い抜いて行く俺の存在意義だと。


初出日:2021.04.24
加筆修正日:2022.01.11