理由などない

「いやー丁度いいところにオメーがいて助かった」
「なんで俺が重い方持ってんだよ!」
「なんだか…人気が薄れてきたな」
「気圧がどんどん下がってるわ、早く船に戻らないと」
「…ルフィ達はもう来てると思うんだけれど、」
「「「あ(ん)(お)(あら)」」」

死刑台広場の目の前。シナは漸く一味と出会した。船長のトレードマークが見えないことを指摘すると、すぐ先にざわざわと人だまりが出来ている。なんとなく、理解が先行する。ルフィはやらかす人だ。出会ってまだ3日ほどだが分かることは、彼は何か持ち合わせているということである。

「なんであいつが死刑台に?!」
「くそっあいつ…!」
「ゾロ!」
「…シナ、俺も行ってくるわ」
「いいえサンジ、」
「ん?」
「多分…ルフィは死なないわよ」
「え、」
「…まあ、ゾロの手助けになら行ってもいいんじゃない」
「?もしかして!シナちゃん、俺を呼び止めたくて…!」
「違うわ早く手助けしてきて」
「んんん!シナが俺を頼っているうう!」

ふと高い建物を見ると数時間前まで一緒にいたスモーカーの姿が見えた。彼は、海軍。これから身を埋める海賊などにいては、彼はきっと許してはくれないだろう。だが、これは性なのだとも感じる。きっと悲しい巡り合わせであって、自分の道は海賊という大それた集団が付き物なのだ。

ルフィが笑って死んだ、と告げた直後ーーー死刑台ごと雷が落下し、全てがなだれ落ちていく。それを見て、やっぱりだと腑に落ちた感覚に陥る。ルフィはそんなオーラを感じるのだ。それと同時にどこか昔に感じたような懐かしい感覚。これが自分の能力なのか記憶の中なのかは定かではないのが惜しいところである。

「おいお前、神を信じるか?」
「馬鹿がそう言ってねえで早く出るぞ」
「…やっぱり死ななかった」
「おおー!シナ!会いたかったぜ」
「私もよ、やっと会えて嬉しい」
「おいのんびりしてる場合じゃねえぞ!街を出るのが先だ!」

ナミの言っていた通り、嵐が街を襲った。彼女は気候を感じるのに長けているのだと、走りながら納得した。目の前に現れたたしぎをゾロが制す。その先に向かうと、スモーカーが既に一味を待ち構えていた。

「おまえらを海には行かせねえ!!」
「、!スモーカー!」
「シナ、海賊になるなんざ聞いてねぇぞ」
「あら、言ったら許してくれたの?」
「!ふざけんなよ、おまえは絶対行かせねえ」
「ん?シナ、知り合いか?」
「ええ。まあ、ね」
「ここでお前ら一気に捕らえる!」
「うっせえ!どけ!あとシナはもう俺らの仲間だぞ!」
「?!黙れ麦わらが!」
「てっめえ、!」
「ごめんなさいスモーカー」
「あ?!」
「私急がなきゃいけないの。またどこかで会いましょう」
「!、シナ!」
「、…んあ?」
「…サンジ、ルフィ、行くわよー」

一瞬であった。シナの構えにより簡単にスモーカーの纏った煙は消され、ルフィとサンジはその場に解放された。"ツキツキの実"を食べた自分にとって、世界中の引力を制するのは容易いことであった。

「なんだ?!おまえヘンなの食った奴か?」
「そう、ルフィと同じヘンなの食べたの」
「うおーすげー!おめえー強えな!」
「かっこいいシナちゃん大好きだああ」
「てめえら!ゴタゴタ言ってないで早く走れ!こりゃでっかい嵐が来るぞ!」

ゾロに掴まれ、船を目指す。後ろで不意に懐かしい感覚を感じたが、もう振り返らなかった。次会った時は、捕えられてしまうのだろうか。だが、それは時が決めることであるので、考えるのをやめる。ルフィに、任せるしかない。運命を誰かに委ねるのは二回目であると、なんとなく楽しみを感じる。

「"華月"と、海賊王…世界は仕組まれてんのかもな」

後ろから革命家の視線は一味にずっとむけられていた。










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