でたらめ

双子岬。

「俺は強いだろうが!!!」
「‥?」
「お前の仲間は死んだけど、俺はお前のライバルだ」
「…またお前に会いに来るから、」
「、!」
「その時またケンカしよう!」

ルフィは大きなクジラにそう叫んだ。心無しか、クジラの目に涙が見えるのは、きっと私だけではない。一瞬にしてクジラとも心を通わせてしまった。やはり不思議な人だとその後ろ姿を見ながら考えていた。





メリー号は相変わらず騒々しく、天候がころころ変わる偉大なる航路の洗礼を受けながらある街に船を進めていた。見知らぬ2人を乗せ、航路を決めたルフィは優しいというか素直というか勘繰らないというか。早くも疲れきっているナミに少し同情する。

「ところでナミ」
「ん?」
「記録指針は大丈夫かしら?」
「ええさっき確認し…って、あああああ!」
「どうした?!ナミ!」
「180度旋回して!進路から逆走してるわ!」
「ええー!」
「偉大なる航路をなめちゃだめなんだよ…」
「あら、あなた方そこで休んでるの?」
「あ?」
「生憎この船、人手が足りないの。手伝ってもらえる?」
「めんどくさいわー… 」
「従わないならここから海に突き落とすまで」
「「手伝います」」
「おいおいシナ怖えよ…」

全てがでたらめな海。五年前とまるで変わっていないと、先々の厄介を考えるとため息がでた。昔乗っていた船は幾分とこの船より大きかったため、こういう作業は見ているばかりだったが、メリー号は人が少ない。力仕事はあまり得意ではないが協力しあうことでそんなことはあまり考えずに済んだ。

「ミス・ウェンズデーとMr.9さん?」
「あ、ああ…」
「…そのコードネーム、聞き覚えがあるわ」
「え?」
「秘密が売りの、組織さん?」
「!」
「…まあせいぜい頑張るといいわ。ここのクルー達は手強いわよ?」

ふ、と笑みを零した女を見て、ミス・ウェンズデーは思わず疑惧した。何か、行動を読まれているような気持ち悪い感覚に背中がぞくりとする。重要機密が早速バレてしまっている状況に加え、自分の身に置かれたものまで見透かされるんではないか、という不安が襲ったのだ。

やがて、落ち着いていく海の中で、満身創痍のクルー達がばたりと倒れていくのと共に嫌な考えを必死に払拭した。

「、…んあ」
「ゾ、ロ?」
「おいおいいくら気候がいいからってだらけすぎだぜ?進路はちゃんと取れてるんだろうな」
「おめェが言うな!!」
「ん?おまえら名前なんて言うだ」
「ミ、ミス・ウェンズデーです…」
「Mr.9だ…」
「そうそう、なーんかその名前ひっかかるんだよな…」
「あら、あなたも?」
「ん?てめーもか?」
「なーんか企んでる顔してるから、さっき彼らに釘は指しておいたけど」
「そうか、用意がいいな…」
「(怖ーー…)」
「ゾロ、あなた忙しい時に1人よく寝ていたわね」
「あ?そうか?」
「ええ…後ろの女の子が激怒してるわよ」
「なんだ…痛え!」
「あんたよくも1人ぬけぬけと寝て…!」
「、女の子は基本怒らせないことよ」

苦言を呈されたゾロは、意味をあまり理解出来てないようだ。霞んだ雲が段々と晴れて、大きいサボテンが見える。ここがウイスキーピーク。それは最初の航海が終わったことを指していた。

「海賊だ!」
「ようこそ!ウイスキーピークへ!」
「ようこそ、ねえ…」











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