なんとなく違和感

『頭、出てきたぞ!』

「ん?」

何の前触れもなく、男の声が聞こえてきた。なんか、どこかで聞いたことがある気がする声。誰だっけ。


その男の声をきっかけに画面が明るくなり、たくさんの白衣を着た人と、
「親父?」


――古い記憶のものよりだいぶ若い親父の顔が映った。警察だった父はいつも難しい顔をしていたが、映っている顔は本当にうれしいというように破顔している。

「そうか、親父か……さっきの声」

最後に会ったのがだいぶ昔だったので、すっかり忘れていたが、そういえばああいう声だったな。


しばらくの後、周りが騒がしくなる。そして、またしばらく経った後、視点がぐるりと変わり、やけにやつれている母親が映る。こちらもやはり記憶より若い。

「なんなんだ、これ」

その一言だった。その後、場面は変わり、涙ぐんだ祖父母が映り、まだ幼い兄の彩奈が映る。

「お前はよく生まれてきてくれたなあ」
「あの子の分もしっかり生きなきゃなあ」
「これで、彩奈もお兄ちゃんだね。よろしく」
という言葉が聞こえる。
それを受けて、泣きはらした跡がある兄が頷いている。これは、もしかして……

「俺が生まれたときの映像?」

そうか、そうか……だから皆こんな感じなのか。

俺が出てこないのは、俺目線だからだろう。自分目線で自分の成長を見る映像というのも、そうとわかるとなかなか面白そうである。なんせ、思い出を振り返ることができるのだからな。










まあ、せっかくなら誰か**兄とか**と、共有したかったけど。






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