スマホに罪はないけど

画面はいきなり変わり、幼稚園の入学式になった。結構展開早いな、俺さっき生まれたのですが。

俺は人見知りが激しくて、知らない先生、知らない子たちが怖く見えて泣きわめいていた、


――と母から聞かされた時は、「嘘つけー」とか言って笑っていたが、本当にでっかい声で、そりゃあもう、これ以上ないぐらい泣きわめいていて……もう、穴があったら入りたいです。母さんごめん、本当だったわ。

その後も運動会で転んで泣きわめき、雷が怖くては泣きわめき、遠足で迷子になって泣きわめき、プールの水が怖くて泣きわめき、泣きわめき、泣きわめき、泣きわめき続け、ついに卒園式が泣きわめきはじめ―――じゃなくて、卒園式で泣きわめき始めた。……よく涙が枯れなかったな、俺。



続いて小学校である。羞恥心からか、泣きわめくことは無くなった。もともと泣き虫のくせに好奇心が人の何倍も強く、疑問に思ったことはトコトン追求したがり、知識欲もとても強い人間であった俺は『勉強が好き』という変わった子供に成長した。新しい知識を自分の中に蓄えていくことが何よりも好きで、低学年の頃から《友達とのドッチボール》よりも《一人で読書》の方が好きな変わった子供だったのだ。友達も少なかったが、友達よりも知識が欲しかった俺は特に気にしていなかった。
「変なやつ」「つまんないやつ」
と言われ、嫌がらせをされたこともあったが、人は無抵抗なつまらない奴にちょっかいを出すのはつまらないと感じるらしく、すぐになくなった。



中学に上がっても好奇心、知識欲は尽きることなく、むしろ悪化していった。だが、さすがに思春期になると人目も気になって友達も欲しくなり、ある程度人付き合いをするようになった。勉強も一年のことから一生懸命頑張ったのでテストでは毎回トップをとることもできた。だが、知識と努力だけでは限界のある実技教科はどうも苦手だった。中三になって周りもようやくまともに勉強し始めると、
「どうしてそんなに天才なの? 脳みそ交換して!」
「どうしたら簡単にいい点とれる?」
とか舐めくさったこと言われてとにかく腹が立った。確かに記憶力はいい方ではあったが、大半は努力の積み重ねで得た結果だ。それを《簡単》などというような言葉で汚されて、否定されて、ひどく気分が悪くなった。こういう輩はまずスマホをぶっ壊せばいい。

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