いきなりファンタジーなようで最初から幻想だった


なんか声が聞こえたぞ。どこからだ……誰もいないが。

「あ、下です下。ちょっと退いて」

「ああ、すみません」


一歩後ろに下がると、『ごとっ』という音がして床の一部が持ち上がった。
え、そんなとこが開くの?
じゃあ、俺もここから入ったのかな。とか考えていると、そこから白い服に白い羽がついた少女が出てきた。

見た感じ俺と同じぐらいの年だろうか。

なんか、誰かに……似ている気がする。……気がする。

「えっと、重たい貴方は榊彩人さんでいいですかね」

《重たい》を強調された。別に普通だと思うのだけど。

「あ、はい。すみません……あなた、何者ですか?」

「苛立ちのあまり自己紹介を忘れていました。コホン、
私はラブリーでキュートな天使界のアイドルクスノキ カエデちゃんです」

その自己紹介の直後、『かあぁ』という音がしそうな勢いでそのカエデという天使は頬を赤らめた。

「恥ずかしいならやらなきゃいいのに」
「きまりなので」
「あなたは天使、なんですか?」
「はい」
「じゃあ、ここはどこなんですか」
「うっせぇなあ……あ、失礼いたしました。えっとですね、ここは所謂《天国》なんです。ここでは天使が役人を務め、あなたのように天国に来た方の願いを一つだけ叶えて差し上げる場所です」
「地獄もあるんですか?」
「はい、そこでは悪魔が罪の重さの分、罰を与えるのですが……貴女には関係ないですよね。ウザいです」

さっきから笑顔でズケズケ言うなあ……

「すみません。気になると聞かずにはいられなくて」

「まあ、いいです。で、願いを言ってもらえます?」

「あ、願いの前にもう一ついいですか?」
「はい……―――――」

小さい声で「面倒くせぇ」と言ったのが聞こえたが、気にせずに続ける。








「あの、テレビに俺が死ぬまでは映らなかったんですけど、なんでですか?」

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