「あんたやるわね〜。あんなとこで堂々と湊先輩フるなんて!」
教室に戻ると、さっきのを見たであろうクラスメイトから野次られる。
「でも、これで心置きなく文化祭に集中できるね!」
「ミスコンもだけど、クラスの方もどうする?」
もっとツッコまれるかと思っていたが、切り替えが早いクラスでよかった、と安堵した。
「ミスコンってなんか出し物しなきゃいけなかったよね?」
「得意なこと披露するやつでしょ?」
「そうそう〜!なまえなにやるか考えてる??」
突然話をふられるが、正直何も考えていない。
「ごめん、全然考えてないや。」
「えーっ!なんかないの?得意なこととか!」
「特技か…」
うーん、と頭を捻らせていると、
「……歌えばいいじゃん」
と研磨が言う。
「歌!?なまえ歌得意なの?」
「嫌いじゃないけど」
「なまえは歌うまい、と思う。楽器もできるし。」
「楽器も!?何ができるの!!?」
「えっと、ピアノと、ギターかな。」
ピアノとギター!じゃあ弾き語りとかどう? それだったらこの歌は? いいね!
なんてクラスメイト達がやりとりしている。
自分のことなのに他人事のように聞いていると、なまえがやるんだよ、と研磨が呆れた表情をしている。
「じゃあさ!うちのクラスはミュージックカフェ的なのやろうよ!歌ったり生演奏したり!そしたらみょうじさんもバレずに練習できるし!」
音駒ではミスコン出場者は文化祭当日にお披露目となっている。自分が出ることを周りに言うも良し、サプライズにするも良しとなっている。今年は3年生が1人出ると噂になっているが、それ以外の情報は全く出ていない。
なまえは言うつもりなどなく、黒尾をはじめ、バレー部にも言っていない。
クラスだけで内密に進めているのだ。
「でもわたしのためにクラスでの出し物も決めちゃっていいの?」
「いいのいいの!みんな協力するって言ったし!」
クラスがこんなに協力してくれているのだ。期待に少しでも応えたい。
「ありがとう。じゃあわたしギターの弾き語りやる!」
わああ!と盛り上がるクラス。
「なまえ何披露するか考えといてね!」
「クラスはどうしようか?何か楽器できる人〜?」
わたしトランペット吹ける!俺歌いたい!とクラスでは話し合いが進められていく。
いろいろ恵まれてるな、とクラスを見渡して思う。
なにかと良くしてくれるクラスメイトのためにも頑張らなきゃ、と部活の合間を縫ってギターの練習が始まった。
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