昼休みになり、あの手紙の通りわたしはひとりそこに来ていた。

差出人はなぜこの賑わっている中庭を指定したのだろうか。疑問に思っていれば、みょうじさん。と声をかけられる。

「俺、3年の湊。サッカー部の主将やってます。」
「みょうじです。あの、手紙の相手って湊先輩ですか?」
「うん。急に呼び出してごめんね。」
「いえ、何か用ですか?」

まさかサッカー部の主将さんに呼び出されるなんて、なにかしてしまったのだろうかと不安になる。爽やかイケメンでサッカーも上手らしいこの人は音駒ではなかなかの有名人だ。

「俺、前からみょうじさんのこといいなって思ってて。よかったら付き合ってくれない?」

え?と頭にハテナが浮かぶ。その言葉に反応したのはわたしだけではなかった。周りが突然ザワザワしだす。そうだここは中庭だ。他の生徒もたくさんいる。
状況が飲み込めずパニックになっていると、手を引かれ、気付いたら抱きしめられていた。
キャー!と女子生徒の悲鳴が聞こえるがどこか他人事のような感覚だ。


抱きしめられたその先に見えたのは、クロの姿だった。わたしを見ると顔をそらし足早に去っていく。
待ってクロ、と思うが動けない。


湊先輩はそのままわたしの耳元で 返事は今度でいいから。というとわたしを解放し、じゃあ、とにこやかに校内に戻って行く。

残されたわたしは、湊先輩に告白されたことや、ここが中庭だったことなんでどうでもよくて、ただ抱きしめられているところをクロに見られてしまったということだけが大問題だった。




ALICE+