あれからクロとその話をすることはなく、梟谷学園グループによる合同練習の日になった。

GWはリエーフのお世話係りをしていたため宮城には行けず、因縁の相手である烏野をみるのは今日がはじめてだ。この合同練習が決まった時は今日がすごく楽しみで待ち遠しかった。

だが、クロとギクシャクした関係が続き、正直2日間共に過ごさなければならないのは気が重い。こんなに気まずいのは久しぶりだ。

昔一度今回のようになったことがある。中学生になって少し過ぎた頃、わたしがクロのことを"クロさん"と初めて呼んだときだ。

「は?ナニソレ。おちょくってんの?」
「だって、クロさんは先輩、ですし。」
「敬語とか今更じゃね?俺ら幼馴染じゃん」
「でも…」
「なに、他のやつになんか言われたの?」
「…言われてない、デス」

何度もなぜそう呼ぶのだと問いただされたがわたしは頑なに理由を言うのを拒んだ。
しばらく冷戦が続いたが、折れないわたしに諦めたのと、研磨がクロを宥めてくれたおかげで、他の人がいないときはさん付け敬語無しという条件で終戦を迎えた。

「はぁ…」
「まだ和解してないの?」
「けんま〜、だってなんて言えばいいの?わたしクロの彼女じゃないし、ただの幼馴染じゃん。」
「付き合ってないよ、って言うだけじゃん。…はやくしてよ、クロ最近オーラ怖い」

そんなこと言ったって、わたしだって何度も誤解してると言おうとした。言おうとしたが、それを伝えてどうなるというのだ。付き合ってないよ、で?ってなるじゃないか。

「もうやだ…」

ぶっきらぼうにそう呟くと研磨はこちらをチラリと見るだけでなにも言わない。きっと八つ当たりされたくないのだろう。する気なんてないのに。

「じゃあ俺先体育館行ってるから。はやく烏野のお出迎え行きなよ。」

うう、研磨ひどい。お出迎えにはクロと海さんと虎が行ってる。マネージャーとはいえ、今は本当にクロのそばに寄りたくない。

はぁ、と何度目かわからないため息が出た。



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