「なあ、黒尾チョーシわるくねー!?」

あの日からなまえとはまともに話してない。普段学校や部活ではそこまで話さないが、家に帰れば幼馴染として仲は良い方で、互いの家を行き来し同じ空間にいることが当たり前になっていた。

ここまで話さないのもなまえと研磨が中学1年の時以来だ。
まぁあの時はなまえが俺の事をクロさんと呼び、敬語で話しかけてくる場合だけ無視してたんだっけ。


不調の原因は分かっていた。あの日中庭で見た光景が頭から離れない。

離れるわけがない。ずっと好きだった子と、学校イチのモテ男が抱き合っていたのだ。


俺はずっとなまえのことが好きだった。
でも、それを伝えるつもりはなかった。
幼馴染としての今の関係を壊したくない、というのももちろんだが、なまえは研磨のことが好きなのだと思っていた。
研磨なら、と諦めていたが本心では俺を好きになってくれればいいのに、と何度思ったことか。

そうやって誤魔化してきた恋心だが、他の男にとられるぐらいなら伝えれば良かったと後悔した。今更だが。

部活後にはなまえのことを待っていたし、あれだけのイケメンだ。俺に勝ち目なんてない。

2人がどういう関係なのか、聞いてしまうのが怖い。

だが気になる、話せない、聞けないとそのことが頭でぐるぐる周り、自分が行動できないだけなのに、気持ちは下がっていく一方だ。

バレーボールに私情は持ち込まないと決めていたはずだった。

しかし木兎にさえバレているのだ。部員達には筒抜けだろう。



「そんなことねーよ。」
「そう!?ならいーんだけどさー!!なんかあんなら言えよ!」

今の自分の不甲斐なさを痛感した。



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