第09話 『招かれざる誤解』



へいへいへいへいへーい!
休日の朝はテンション高め☆な名前ちゃんでっす!

今カツラギ大佐にホークザイルの乗り方を教えてもらいました!
そうです!
今日はホークザイルに乗ってちょっと空のお散歩をしようと思います!

気分は空を飛ぶナウ○カで!!
テトはいないけどね。


「わかりましたか?」

「オッケーです!」


ちょっと心配ですね。なんて苦笑いの大佐。
やだなー。大丈夫だよ!!


「明日も休みなんですよね?」

「はいっ!」

「では…明日の19時までに帰ってこなければ、探しに行きますね。」


前回、街に行って戻ってこなかったことを思い出しているのか、やはり心配そうだ。
ここはカツラギ大佐の行為に甘えておこう。


「りょーかい!よろしくおねがいします!!でわ!いってきま〜す。」

「お気をつけて。」


勢いよくホークザイルを発進させる。
これに乗るのも久しぶりだ。


「風きもちー!」


とりあえずどっかの街にでも下りるか。
キョロキョロと周りを見渡せば、すぐ真下に教会のような建物が目に入った。


「…おっし!」


一瞬にして行き先は決まった。
「レッツゴー!!」と、はしゃいでいた矢先………あれ?
なんでホークザイル止まんの?
っていうか、なんで落ちてんの、私……


「いやぁぁーぁーぁあぁーぁぁぁーーー!!」


人生で二度目の経験をしてます、私。
もう鳥だね!
きっと前世は鳥だよ!
私の知らない間に本能は空を飛びたがってたんだ!

まぁ…飛んでるってより、落ちてるってほうが正しいけどな!!

うぅ、コナツでもっと遊んでおくんだった。
ヒュウガのグラサン一度は外してみるんだった。
まだクロユリと寝てあげてないし、ハルセさんの笑顔も今日はまだ一度も拝んでいない。
カツラギ大佐の料理、食べたい。

アヤナミさんは………なんもないや。


願望と欲望が入り交じる脳内。
後悔ってするもんだなぁ…
確か、一度目はバケツプリンだった気がするよ。
この前帰ったときに見たらカビが生えてたけどね!!
ちょっと遅かった!!
いや、ぶっちゃけかなり遅かった!
ナマモノだもんね!!

なんて考えながら余裕ぶってると、また誰かに抱きとめられた。


「ぎゃう!!」

「大丈夫か?」

「…うん。」


え?
この、司教服着てるくせにガラの悪そうなあんちゃんは……誰??
っていうかめっさ怪しっ!!




***




お花に囲まれている庭園の真ん中に机とイス。
私はそこに3人の司教に囲まれて座っていた。


「花茶だけど、どうぞ。」

「ども。」


お花が浮いたお茶を差し出された。
さわやかな香りだ。


「おいしー。」

「よかった。」


にっこりと笑う一番優しそうな人。
確か、ラブラドールとか言ってたっけ。
その右横に眼鏡をかけてるカストルさん、そして一番気になってる…ガラの悪いフラウ。


「それで、どうして落ちてきたんですか?」

「あーうん、ホークザイルが壊れてね、そのまま真っ逆さま。」


ま、どんな着地にせよ行きたかった場所には着けたんだし、結果オーライだ。
二度目はなんか余裕あったな、自分。


「壊れたってより、壊したんじゃねぇの?」


んだと!このニセ司教め!!

壊した?
いやいや、壊れたんだよ。
こちとら死ぬ思いしたんだよ!
あっち(ブラックホーク)といいこっち(教会)といい…私を何だと思ってんの?!

女の子だよ!
大事に扱おうよ!!
まず「怪我はありませんか?」だろ!!
問えよ!!


「怪我はありませんでした!」

「は??」


あんたが聞いてくれないから先に答えちゃったじゃんか!!


「そうだね、怪我がないようでよかった。」

「そうですね。」


ラブラドールさんとカストルさんだけだよ!
そう言ってくれるのは!!
フラウ嫌いだ!!
女の子の敵だ!!


「ここへ落ちてきたのも何かの運命かもしれません。お名前をお聞かせ願えますか?」

「名前です。名字名前。あ、えっとこっちじゃ名前=名字です。」

「では名前さん。貴女が乗ってきたホークザイルも壊れてしまっていることですし、もし帰りの足がないのでしたら、こちらで用意しますが…」

「お願いします!もし帰れなかったらどうしようかと思ってたんです!帰れなかったら絶対ムチで叩かれるとこでした…」


だって
帰れない→仕事さぼりになる→アヤナミさんが怒る=ムチ。
これが世界で一番恐ろしい方程式だ。


「え?」


ラブラドールさんの笑顔が消え、カストルさんは緊張した面持ちで、さっきまで明後日の方向を向いていたフラウは私と目を合わせてきた。
なんかヘンの事言った??


「ムチ、ですか。」

「ムチですけど??」


何かおかしいことでも??
小首を傾げていたら、急に両肩をカストルさんに掴まれた。


「そんな所に帰らずとも、きっと貴女に合う場所はあります。ムチで叩かれるなんて…。知ってしまった今では、そんな場所に貴女を帰すわけにはいきません。こちらで保護します。」


保護?!
何、ムチがいけなかった?

そっか、普通そうだよね!
あそこに慣れすぎてて感覚鈍ってた!

日常の慣れっておっそろしぃ!!
ブラックホークではムチは常備装備だよ!
アヤナミさんだけ☆


「保護……」


保護される→帰りたくても帰れない→仕事さぼりになる→アヤナミさんが怒る=ムチ!!
この方程式も非常に困るんですけど!!


「帰る!!」


保護だなんて堪ったもんじゃない!


「そんなに主人に縛られているのですか?ここなら大丈夫です。神がきっと、幸せな方向に導いてくださいますよ。」


いや、だからその考えが私を不幸に導いてるんだってば!!
しかも主人ってなにさ!
話の流れ方からいうと…アヤナミさん?
奴隷じゃないんだから私服もそんなボロボロに見えないっしょ?
ねぇ??


「貴女に神のご加護を。」


私の話を聞けぇぇぇぇぇぇっ!!


この人たち優しいけど……何、勘違いしてんの?!

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