ドタバタな僕らの日常

「おーい!起きろって!」
「んー、……」
「珀空!朝だぞー」

聞き慣れた声が聞こえる気がする。
きっと気のせいだ、うん。
「おきろー!!!」
「…っ!うわっ、なに!?」
驚いて目を開ける。そこにいたのは一つ年上の兄の翔陽。
どうやら私の耳元で叫んだらしい。

「びっくりしたんだけど…」
「起きないお前が悪いの!」
またベランダで寝てるし、と彼は続ける。
はーい、ごめんなさい。って言いながら体を起こしてうーんっと伸びをした。
「もう朝ごはん出来てるから着替えたら来いよな」
「はーい、…ってあ、ちょっと待って」
欠伸をしてからそう返す。
はぁ、とため息をつきながら私の部屋のドアに手を掛けた翔陽を呼び止める。
「なんだよ」
「おはよ、翔陽」
「…おはよ!」
彼はそう言うとそのまま扉を開けて出ていってしまった。


◇◆◇



「母さん、夏!おはよう」
着替えから自分の部屋を出て、リビングに行けば2人を見つけたので挨拶をする。
「おはよう、ほらご飯食べちゃいなさい」
「はーい!」
「おねーちゃん!おねぼうさん?」
「んー、どうだろ?でもいつもより早起きだよ?」
自分の定位置の椅子へと腰掛けて用意された朝ごはんに手をつける。
「あ、珀空やっと来た」
ご飯を食べていれば、出かける準備が出来た翔陽がやってきた。

「あ、翔陽。そっか、今日からギルド入るんだっけ??」
「まーね」
だから、今日はいつもより早く私を起こしたんだ。
ちなみにギルドとは、主に魔法使いが集まる組合みたいなところ。数が沢山あってどこも個性的だと聞いたことがある。主にギルドに来た依頼を依頼者の希望に合わせて解決していくのだ。
何歳からでも入れるのだが、翔陽は今日から。理由は先日突然あったモンスターの襲撃の時に魔法が使えるようになったから。
それを見てたギルドの人がうちに来てみないかと翔陽を誘ったのが始まりだ。
それまでは、お母さんと一緒にパン屋さんをする!って言ってたのに。あの頃は可愛かったなぁ、今もまあまあ可愛いけど。

「隣町だよね、なんだっけ?カラス?」
「烏野だよ!!」
「あ、そうだったかも」
あんまり聞かない名前だから忘れてた。
「お前も今日依頼があるんだよな」
「そうだよ。確か私も隣町だった」
「じゃ、一緒に行くか?」
「うん!」

私の依頼と言うのは、私の仕事「何でも屋」の依頼のことだ。私に読み書きを教えてくれた近所のおじいちゃんが昔からやっていた「探偵」というのを、おじいちゃんが亡くなる寸前に受け継いだ。
探偵にしては、草むしりやら子守やら話し相手やらという仕事が多いため、何でも屋と改めさせて貰った。もちろん許可は貰っている。

「今回の依頼は?」
「えーっと、居なくなった猫探し」
「何時くらいに終わんの?」
えー、何時かな…。
「見つかるまでだからなぁ。わかんない」
「終わったら連絡入れといて。一緒に帰ろ」
「了解!」

そう返事しながら、最後にお母さん特製のパンを食べて食器を流し台に置きに行く。

「あと5分待って!準備してきまーす!」
「おう!」


(よし準備終わり!翔陽、お待たせ!)
(おー!五分ぴったり!)


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