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「レントゲンは実習以外では初めて?」
「…いえ、幼い頃にやらせてもらいました。」

珍しい子、とクスッと笑われたが今は撮ることに集中しなくては…。無事に撮れた画像を加工して見やすくする。私はこの加工が1番好きだ。白を飛ばしすぎても駄目、暗くしすぎても駄目。このぴったり当てはまった時最高に達成感を感じる。

「…できた。」

どれどれ、と確認をした望月は思わず「すごい…」と声を漏らした。出来上がったレントゲンを急いで科医に渡し技師の仕事は終わった。

「…あの、レントゲンのデータって貰ってもいいですか?」
「え?これ?病院外に持ち出さなければ大丈夫だったはずだけど…」
「本当ですか?!やった。とっても綺麗に撮れたから…」
「しかも、ここでの初仕事、でしょう?」
「はい!」

元気に答えたあと、うきうきと画像を転送する。容量が大きい為まだかなーと待っているとポンポンと頭を撫でられた。

「えぇ、何ですか?」
「…いや、撫でやすい頭だなって思っただけよ」
「撫でやすい、頭?さっき葉山さんにも撫でられたんですよね。」
「あぁ、それで…少し髪が乱れてるわよ。」

嘘っ?!と言って急いで手櫛で髪を整えアワアワしているとまた望月に笑われた。

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遅い昼食を食べようと食堂へ行き何処に座ろうか悩んでいると遠くから「おーい!こっちこっち!」と言ってる声が聞こえた視線が合うと手招きをしたのでどうやら私の事を呼んでくれてたみたい。そこへ向かうとフライトドクター候補生の4人が座っていた。
別のテーブルから椅子を引っ張り所謂お誕生日席の完成。

「さ、ここに座って。あ、自己紹介がまだだったよね。俺は藤川、よろしくね。で、こっちが藍沢、こちらの女性が」
「緋山、よろしく。」
「白石です、よろしくね。」
「みょうじです、よろしくお願いします。」
「同期なんだからさ、タメでいいよ。俺ら気にしないし。」
「あ、うん。わかった」

たどたどしい自己紹介が終わったところで聞き覚えのある声が上から降ってきた。

「なまえちゃんさっそく同期と仲良くしてるのか、おじさん昼食誘おうと思ったのに」
「葉山さんっ!」
「初仕事、お疲れ様。新人とは思えない程良いレントゲン写真だったよ」
「あ、ありがとうございます!」

ガタッと立ち上がりそのままペコリとお辞儀をすると葉山は当たり前のように頭を撫でて去っていった。それを見送り席につく。やったーという気持ちが抑えきれず思わずヘラっと笑うと斜め前に座っていた緋山がポンと頭に手を置いた。

「へっ…何?」
「…なんか、妹っぽいなって思って」
「そうなの?」
「…多分」

その後患者の話やたわいの無い雑談をしていると食べ終わった藍沢が席を立った。

「藍沢もう行くのか?」
「あぁ」

そう答えたあとなまえの頭をポンと撫でた。
その行動に前に座っていた3人、私そして何より驚いていたのが藍沢だった。たった数秒の出来事だったと思うが長い時間固まっていたようにも思えるその時間を誰が発したか分からない「え?」という声で破った。
藍沢は何事も無かったように歩き出し私を含め4人はポカーンとしていた。