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初仕事以降、少しずつではあるがCTやMRIを撮らせてもらったり、葉山や望月の撮り方など教えてもらいつつ確実に力を伸ばしていた。木陰で今まで撮ったレントゲン写真を眺めていると誰かがやってきた。顔を上げてみるとペン回しをしている藍沢だった。

「えっと…こんにちは」
「…うっす」

挨拶をしたあとしばらくの沈黙が流れる。どうしたのだろうとじぃっと藍沢の顔を見ていると横に座った。そのまま何も話さず藍沢はペン回しをしている。藍沢と一緒にいて話す内容は見当たらないが、この沈黙は苦じゃない。再びレントゲンに視線を戻すと「おい」と声を掛けられた。

「…トイレで倒れたばあさんのCT撮ったのはあんたか」
「トイレ…あ、西口さん?ううん。私じゃないよ、犬山さんが撮ったけど。どうして?」
「あいつのは見えづらい」

ばっさりと言い捨て突然の出来事にフォローを入れそびれた。心の中で犬山さんごめんなさい。と謝っておいた。それを犬山さんに伝えればいいのか聞こうと思ったら藍沢によって遮られた。

「だから、今度から俺が担当する患者はお前が撮れ」

俺様というべきか横暴というべきなのか、フリーズした頭を何とか働かせて何とか出た答えは

「…いや、無理だよ。だって決めるの葉山さんだし」

そう告げるとじとっとした目で見られたが本当のことだから仕方がない。困っているというのが伝わったのか乱暴に頭を撫でられたかと思ったら去っていった。

「えぇー…なんで…?」

―――
――


藍沢さんの謎行為から解放され、MRI室へ向かった。手が空いたら先輩たちの撮影を見るようにと言われていた。今日もあんまり来ないといいなぁと思いつつ部屋に入ると大きな声で「お願いします!」と言っていた。突然のことに驚いているとお願いしていたのは藤川だった。

「お願いします、そうすれば自信がつくって本人が言っているんです!」
「藤川さん…?どうしたの?」
「あ、みょうじさん。えっと…その…」
「この患者さんブラジャーをつけてMRIを受けたいと言っているんだ。」
「えっ…?ブラジャー…?」
「なんやねぇちゃん。男がブラ付けててなんか悪いんか…!」
「あ、いえ。金属はダメなのでワイヤー無しのでしたら大丈夫ですよ。」

そういうとしばしの沈黙があったが、そうだねと何か悟ったような感じで犬山から返事が返ってきた。じゃあ私借りてきますね。と言い備品室から未使用のブラジャーを借りて無事小村のMRIは撮り終わった。