3-3

運び込まれたサラリーマンの男性はかなり泥酔しているようでベッドに静かに寝てくれないので3,4人がかりで横にさせた。白石の判断では軽傷なので転んだケガと念のためCTを撮ってHCUで寝かせることになった。
しかし、受け入れてほしいと言ってきた救急隊員は非常階段から転落したと言っていた気がするのだけれど…そう思い白石にMRIも撮りたいと提案した。

「MRIも撮るの?私は構わないけれど…みょうじは大丈夫なの?」
「うん、私は大丈夫。さっき救急隊員が言ってたことの方が気になるからどうしても撮りたいの。」
「わかった、じゃあ撮り終わったらHCUに運ぶから終わったらコールセンターに持ってきてくれる?」
「任せて」

暴れる島田をなんとか抑えてCTとMRIを撮り終わり加工へと移る。折れたりはしていないようで骨の異常は見当たらない。腰の部分を撮ったMRIを見ると自分の目を疑った。転んで打つとすれば腰から太ももあたりかなと予想してMRIを撮ったわけだが

「これ…出血してる…!?」

がたんと椅子を蹴飛ばし出来上がったレントゲンを持ちコールセンターへ向かった。コールセンターに着くが2人はまだ戻ってきていない様子だった。全力で走ってきた私に異常を感じたのか藍沢と緋山がどうしたと聞いてきた。

「さっきのサラリーマン…出血してる、精巣静脈と外腸骨静脈…!」
「みょうじ、黒田先生を呼んでくれ」

息も切れ切れにそう伝えると藍沢は出来上がったレントゲンを奪い取るように持って駆け出して行き、そして緋山もそれに続いて走っていった。急いで黒田先生に電話をし、3,40分に着くことを他の人たちに伝え医師免許を持っていない私はそのまま部屋を後にした。

―――
――


すがすがしい朝をむかえ、夜中から今朝までオペをしていた皆と心配と書類整理で寝れなかった私は誰が見てもひどい顔になっていた。早々に睡魔に誘われた犬山はよく寝たと言わんばかりに大きなあくびをしていた。
朝日を浴びて目を覚まそうと思ったが逆効果になってしまい、あたたかな日の光にすやすやと寝てしまった。遠くで聞き覚えのある声がする…ぶっきらぼうで、でも一緒にいると落ち着くような…。

目が覚めると休憩室のソファで寝ていた。あれ?と思いキョロキョロしていると望月が気付き、「昨日はお疲れ様」と労いの言葉をかけてもらった。

「宿直大変だったみたいね。寝てた犬山には罰としてなまえの分の仕事もやってもらってるから今日はもう帰って寝なさい。」
「え、でも」
「大丈夫よ。それと、あなたの王子様も心配してたみたいだからね」

望月はそう言うとにやにやと笑った。王子様という言葉にすごく引っかかるがとても疲れたのでお言葉に甘えて帰宅することにした。