余白に零したパラノイア



絶望が本当に存在するのなら、このことを言うんでしょうね。なんでかって?だって、わたしは今もまだこうしてここに立っているけど、やっぱり頭の片隅にはいつもあなたのえくぼが張り付いているんだもの。薄い緑の踊り場で、わたしに振り返って、夢みたいな微笑を顔に貼り付けているあなた。そんなあなたに落ちる影。きっとこれはわたしの中の寂寥が見せる幻なんだわ。
幻だわ、きっと。だって分かってたんだわ、わたしが一番、わたしを分かっていたんですから。
でも、もう少しだけ、この幻に浸っていたい。寂しいだけの幻だって、分かってはいるんだけど、簡単には忘れられないものね。忘れたくないのよ。だって、忘れてしまったら、あなたを愛していた愚かで幼い、かわいそうな少女が、死んでしまうんだもの。少女が愛したあの朧げな日々が廃絶してしまうんだもの。
まだ抱きしめていようと思うわ。また、あなたに会えるその日まで。



2017/04/06
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