偉大なる深淵を望む



困難への挑戦のためなら、死をも恐れはしない。困難への挑戦のための死、それはすなわち失敗や愚かなことの象徴ではなく、名誉を得ることに繋がるから。挑戦するその事柄自体は愚かではない。挑戦する者は、いつだって失敗を突き放していくものだ。
しかし、きみは、実に愚かだった。自分がどこを飛んでいるかもわからず、霧を恐れてそれから逃れるために、地面に突っ込んで死ぬ燕のように愚かだった。同じことの繰り返しだなんて、馬鹿げている。何度やっても無駄だ。人間なんて、この宇宙のなかでは果てしなく無力な生き物だというのに。どうして、どうしてきみは、それを繰り返すのか。
どうして。



2017/03/07
prev | cover | next