灰色のカラス



ゴミを漁る。
それがこの女の暴悪さを如実に表す悪癖である。さらに言えば、こいつはゴミの中で最も汚穢なゴミばかりを漁る。まるでそれが義務であるかのように、それが自分に課された使命であるかのように、それを漁り、そして享受する。
悪癖。
全くもって理解に苦しむ癖だ。ずっと昔から……この女が生まれたその瞬間から、その癖は表れていた。生まれついての狂人なんだろう。敬服する人物から饗膳されたものであると言いたげに、その汚穢なものを、汚れひとつ無い純白の皿に乗せ、「堅固」なスプーンで掬って己の口に入れる。一口、二口、三口……。
そんな愛慕に満ち満ちた瞳でソレを見下ろすこの女は、いくらこの私が赫怒に叱責しようが、この愛憐に溢れる狂った乱行を止めない。
またゴミを漁る。漁って、拾って、粗食する。もう止めてくれ。もうたくさんだ。あぁ。



2017/03/11
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