チアリズム大作戦
『どーしたA組!?』
昼休み直後、応援合戦だと急遽聞かされて着替えたものの、チアの格好をしているのは本物のチアガールの方々と私たちA組だけだった。
どうやら八百万さんが峰田くんたちに騙されたらしい。でもまぁ、正直気分転換にはなった。
それにいつもと違う格好で迫ったら、轟くんもどきっとしてくれるかもしれない。
本選はトーナメントとのことでA組の男子と合流した私は真っ先に轟くんを見つけて隣を陣取った。
「轟くん!どう?どう?」
ミッドナイト先生がくじを持って説明しているのを邪魔しないように小声で轟くんに声をかける。
轟くんがこっちを見ようとしたそのとき、尾白くんの声がミッドナイト先生の声をわった。みんな気になったのか、視線が尾白くんに注がれる。
「俺、辞退します。」
多分、昼休みに尾白くんを探して聞こうとしていたことが原因なんだろう。心操くんの個性で記憶が曖昧だと説明する尾白くん。やっぱりなにか変だったのはそういうことだったのか。
ざわざわと会場が喧騒に包まれる中、もう一人のチームメイトだったA組の庄田くんまでもが辞退を申し出た。
「苗字もあいつらと同じチームじゃなかったか。」
「うん、でも私は記憶はっきりしてるよ。多分個性にはかけられてないんだと思う。」
不意に轟くんに問われてびっくりしたけど、尾白くんや庄田くんの言うような記憶が曖昧なんてことはない。くっきりはっきり鮮明だ。
私の個性を活用するために私には個性をかけないほうがいいと思ったのかもしれない。騎馬戦の最中の尾白くんも庄田くんも個性を使っていた気配がなかったから、心操くんの個性は対象の人に個性を使わせることは出来ないんだと思う。
「そういう青臭い話はさァ……好み!!!庄田、尾白の棄権を認めます!」
二人の棄権が正式に決まったことで空いた2枠に私たちのチームに全てのポイントを取られてしまったB組の鉄哲くんと塩崎さんが繰り上がってきた。
メンバーが確定したことで、進行が止まっていたくじ引きを再開し、トーナメント表に名前が書き込まれていく。
初戦は三奈ちゃんだ。正直相性は悪いので速攻で押し出すしかないかもしれないな。轟くんはというとブロックが違ったせいで、戦うなら決勝まで上り詰めないといけない。
「轟くんとは戦うなら決勝だね!」
「誰が相手でも負けるつもりはねぇからな。」
轟くんの気合はすごい。隣にいるだけでひしひしと感じるほどだ。この気合を少しもらって拳を握り締める。大丈夫、私なら出来る。
『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツつかの間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!』
マイク先生の掛け声をきっかけに生徒たちがぞろぞろスタンドへと移動を開始する。騙されたとはいえ、せっかくチアになったんだからとA組女子だけはグラウンドの端に残って応援することを許してもらえた。
「がんばれー!A組ー!!」
ポンポンを振りながら短い裾をひらりと舞わせる。響香ちゃんはあんまり乗り気じゃないみたいでしゃがみこんでしまっている。勿体無い。
レクリーエションは大きな問題が起きることなく順調に進み、勝利を得たA組は私たちに向かってピースサインを送ってくれた。応援した甲斐があるってものだ。
『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』
セメントス先生に会場を作るからもう着替えておいでと背中を押されたものの、勿体無くてもたもた着替えていたら放送が入ってしまった。
これから本選。私の試合は5回戦。ぱちんと頬を叩いて気合を入れなおす。大きく息を吐き出して精神統一する。よし、頑張ろう。
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