男子たるもの葛藤せよ


『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!本場アメリカからチアリーダーも読んで一層盛り上げ……ん?アリャ?どーしたA組!!?』


昼休みの最中は、聞いてしまった半分野郎とデクの野郎の会話のことばかり考えていた。

正直会話の内容は簡単に想像できるもんじゃなくて、でも半分野郎が左を使わない理由には納得が出来なかった。

昼休みも終わり近くなれば、会場に向かっていく人の波に乗って移動する。既に多くのモブがいるなか、名前を探したが見当たらなかった。

終了ギリギリになって、やっときたかと思ったら他の女子のモブと一緒にクソ短いチア服着てる名前が居て、思わず目を背けた。


「峰田さん、上鳴さん!!騙しましたわね!?」


どうやら二人に騙されたらしい。どう騙されたらあんな短い服に短いスカート着ることになるんだ。


「やっぱ八百万すげーな。」


「葉隠もなかなか。」


「なぁ、A組のあのピンクの髪の子やばくね?」


「いや、奥でしゃがんでる子一瞬しか見えなかったけど、結構スタイルよかったぞ。」


ひそひそと周囲のモブどもが話す内容をくだらねぇと思いつつも、好奇心に負けて一度だけそちらを見てしまった。

はしゃぐモブ共に隠れるように、奥でしゃがみこんでいる名前が見えた。クソが、普段そんな短いスカート履かねぇんだから気付いてねぇのか。

見えそうになっている下着のことを考えてしまって顔に熱が篭る。慌てて視線を戻せば、モブどもの視線を追いかける。どうやらそのほとんどがA組だったりアメリカから来たらしいチアだったりに注がれている。

それが気に入らなくて盛大に舌打ちを響かせて名前を見ていそうなやつらを睨み付けた。


『さァさァ皆楽しく競えよ、レクリエーション!それが終われば最終種目。進出4チーム、総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』


プレゼントマイクの放送が入って、視線が中央へと注がれる。端で座り込んでいた名前も、モブどもに引きずられるように中央まで来ていた。ひとまず、誰かに名前の下着が見られてしまうような事態にはならなくてよかったと、ほっとした。

ミッドナイトが組み合わせを決めると箱を取り出して、ここにいる全員の関心がそちらに向いた。

レクは進出者は参加自由らしいので、出ないことに決めた。んなめんどくせーこと、やってられっか。


「あの……!すみません。俺、辞退します。」


今まさにくじ引きが開始されようというそのとき、尻尾野郎が声を上げた。当然ざわつく周囲に舌打ちが零れる。

黙って聞いていれば、尻尾野郎には尻尾野郎なりのプライドやら意地みてーなのがあって、それを踏み躙ってまで本選には出たくないらしい。


「俺のプライドの話さ……。俺が嫌なんだ。あと何で君らチアの格好してるんだ……!」


尻尾野郎の言葉に反論していた女子モブどもが押し黙った。おい、なんでやってるか言えやクソが。

尻尾野郎の話がひと段落したところで、もう一人声をあげるやつがいた。顔も見たことねぇモブだったが、そいつも同じような理由で辞退したいらしい。


「そういう青臭い話はさァ……好み!!庄田、尾白の棄権を認めます!」


ピシャンッと鞭が鳴らされてモブ二人の棄権が認められ、代わりにB組のモブが二人繰り上がってきた。

誰がいようと関係ねぇ。全部ぶっ飛ばして1位になるだけだ。

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