第一回戦終了


『次の試合は……お、初めての女子対女子!!モーレツキョーレツアシッドガール!ヒーロー科芦戸三奈!!対、捕縛に攻撃なんでもござれ!同じくヒーロー科苗字名前!!START!』


マイク先生の掛け声とほぼ同時に三奈ちゃんは私に向かって走り出してきた。やはり反応速度は私より速い。

急いで透明のテグスを三奈ちゃんの足元に巻き付けて後ろへと引っ張る。見えない攻撃は油断を誘ったのか前に進もうとする力が空ぶってバランスを崩した。


「え、うわっ……!」


「もらった!」


バランスを整えるために一瞬立ち止まったのを見逃すはずもなく、極力肌に触れないようにテグスを巻き付けて真横へと引っ張る。

遠心力がかかるようにある程度引っ張ったところでぷつんとテグスを切り離す。


『オイオイ、こっちも瞬殺かよ!?』


空中で勢いを殺せるような個性ではない三奈ちゃんはそのまま場外へと飛んでいく。白線を越えたところでミッドナイト先生の声がかかり、あっさりと二回戦進出を決めてしまった。


「うっそ!?くやしー!」


「こんなあっさりいっちゃうと思わなかったや……。」


驚いたのはお互い同じだったようだ。悔しそうな三奈ちゃんの背中を見ながらステージを後にする。途中で切島くんとすれ違って個性だだ被り対決なんだと気合が入っていた。

さほど疲れてもいなかった私は真っ直ぐスタンドへと戻る。たまたま轟くんの隣が空いていたので、すぐさま隣に落ち着いた。


「さっきの、やっぱすげぇな。あそこまで持ってかれるとなかなか逃げ出せねぇ。」


恐る恐る轟くんの機嫌を伺おうとしたら、先に声をかけられた。その声は瀬呂くん戦のときのような不安を感じるものじゃなく、普段どおりの大好きな声だ。


「三奈ちゃんが私の出方を見てから動いてたら、あぁもうまくはいかなかったと思うんだよね。」


安心したら体から力が抜けて背もたれに寄りかかる。ステージでは切島くんがB組の鉄哲くんと殴りあってる。二人とも頑丈だからすごく時間かかりそうだ。


「轟くん……、」


「なんだ?」


瀬呂くんとの時のことを聞こうかと思ったが、聞いていいことなのか、聞いてどうしたいのかがわからず、口ごもってしまった。


「次も、頑張ってね。」


はぐらかすしか、出来なかった。轟くんは小さく頷いて、そのまま控え室に移動してしまった。

切島くんたちの試合は、二人とも同時ダウンで治療のため運ばれていった。

そして一回戦最後の試合、お茶子ちゃんと爆豪くんがステージに現れる。爆豪くんをよく知るクラスメイトたちからすれば最大の不安要素の組み合わせに視線が集中する。

お茶子ちゃんに贔屓目のマイク先生の放送が入って試合開始となる。突っ込んでいったお茶子ちゃんを迎撃した爆豪くんの攻撃で砂煙が舞い、視界を遮る。

でも私からしたら、今一番の不安要素は轟くんだ。

昼休み、話していた相手は緑谷くんだろう。そんな緑谷くんと轟くんは次の試合でぶつかる。なにか起きてしまうんじゃないかと、どうしても不安になる。

轟くんのことばかりを考えていたせいで、試合の経過を見そびれていた。僅かに熱を孕んだ風が吹きつけてくる。どうやら爆豪くんがお茶子ちゃんの必殺技をあっさり爆破してしまったらしい。

どんな攻撃だったのか見ていなかったが、お茶子ちゃんの攻撃はそう何度も大きい攻撃が出来る個性ではない。それでも爆豪くんに向かっていくお茶子ちゃんだったが、やはり許容重量をオーバーしていたようで倒れこんでしまった。

二回戦進出を決めたのは、爆豪くんだった。

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