不安的中

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次の爆豪くん、常闇くんの試合はまさに一方的だった。

爆豪くんの怒涛の攻めに、常闇くんは一切手が出せないようだ。純粋な実力だけではなく、相性もあったのだろうか。

つくづく爆豪くんの試合は見にくい。爆豪くんの個性が必然的に砂煙を生んで視界を遮ってくる。もし、私も爆豪くんとやりあうことがあったらこれを攻略しなくてはいけない。

常闇くんの降参で爆豪くんが勝ちあがり、決勝は轟くんと爆豪くんだ。正直不安しかない。だって、爆豪くんも昼休み一緒になって聞いていたのだから。


『さァいよいよラスト！！雄英1年の頂点がここで決まる！！決勝戦、轟対爆豪！！！今！スタート！！！』


向き合う二人を一心に見つめて勝敗を見定める。多分、長期戦には持ち込まない。爆豪くんは長期戦に強すぎる。

予想通り、合図とともに大きな氷壁を作り出した轟くん。しかし、それは瀬呂くんのときほどの巨大なものではない。しとめられなかったときに、余力を残すためだろう。

実際、氷壁で見えてはいないが、ボゴン、ゴウン、と怪しげな鈍い音が響いている。そして最後の音とともに爆豪くんが現れる。爆破で氷を削って進んでいたらしい。

お茶子ちゃん戦のときでも思ったけど、爆豪くんの反応速度は早い。第二撃を繰り出した轟くんの攻撃を避けてそのまま投げ飛ばしている。


『氷壁で場外アウトを回避ーーー！！！楽しそう！！』


見えにくい部分は実況に耳を傾ける。未だ両者拮抗状態だろうか。

爆発音が聞こえるから、爆豪くんは連続攻撃をしかけているんだろう。


「てめェ、虚仮にすんのも大概にしろよ！ブッ殺すぞ！！！俺が取んのは完膚なきまでの一位なんだよ！舐めプのクソカスに勝っても取れねんだよ！」


爆豪くんの怒声が響き渡る。轟くんにどうしても左を使わせたいみたいだ。緑谷くんに対して使ったから、余計なんだろう。


「負けるな、頑張れ！！」


二人の状況を見て、きっとどちらの心情もわかる緑谷くんが声を張り上げた。けれど、それをきっかけに轟くんは飯田くんには使わなかった炎を体に纏わせた。

思わず、息を飲んだ。

爆豪くんは攻撃を既に仕掛けている。だというのに、轟くんは纏った炎を消してしまったのだ。

まるでスローモーションを見ているかのようにゆっくりとその光景が頭に焼き付いていく。

回転を加えて更に威力を増した爆豪くんの攻撃が、轟くんにぶつかった。大きな爆発を受けて地面も抉れていく。


『麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加え、まさに人間榴弾！！轟は緑谷戦での超爆風を撃たなかったようだが果たして……』


次第に晴れていく砂煙に、会場中の視線が注がれる。勝者はどっちだ。敗者はどうなっている。

ステージには爆豪くんただ一人。轟くんは場外に押し出されて砕けた氷壁の上でぐったりと意識を失っている。


「轟くん場外！！よって――爆豪くんの勝ち！！」


『以上で全ての競技が終了！！今年度雄英体育祭1年優勝は―――A組爆豪勝己！！！』


勝者が決まり、選手宣誓の宣言通り優勝を勝ち取った爆豪くんに盛大な歓声が溢れるなか、私はただ一人弾かれるように席を立って駆け出していた。

目的地はただ一つ。リカバリーガールのもとだ。爆豪くんの攻撃で意識を失った轟くんも、ミッドナイト先生の個性で眠ってしまった爆豪くん。二人はそのままリカバリーガールのもとへ運ばれるだろう。

どくんどくんと、心臓が不安を訴えてくる。どうか、どうか無事で居て、轟くん。

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