考えろ!コードネーム


「超声かけられたよ来る途中!!」


「私もご近所さんからものすごく声かけられた!」


「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ。」


「ドンマイ。」


体育祭も終わって落ち着いたと思ったら、家を出た途端に近所の人たちが口々に褒めてくれてちょっぴり照れくさかった。

あの日轟くんが帰ったあとお店の手伝いをしてるときからお客さんにも褒めてもらってなんだかむずがゆい。

これが表彰台に上ってたらもっともっとすごい褒めてもらえるのかと思うと俄然やる気になってきた。

ガヤガヤと教室がこの話題で持ちきりになっているが、時間は無情に過ぎていきチャイムが鳴り響いて相澤先生が入ってきた。

体育祭のときはあんなにぐるぐるまきだった包帯がもう取れている。どんな超人回復力なんだ。


「相澤先生包帯取れたのね。よかったわ。」


「婆さんの処置が大ゲサなんだよ。」


誰もが気になっていたことを梅雨ちゃんが聞いてくれた。包帯ぐるぐる巻きでよく見えてなかったけど、実はそんなにひどい怪我じゃなかった、ということなのだろうか。


「んなもんより今日の“ヒーロー情報学”、ちょっと特別だぞ。「コードネーム」ヒーロー名の考案だ。」


「「「胸ふくらむヤツきたああああ!!」」」


静かだった教室が一気に騒がしくなった。それにちょっとキレたらしい相澤先生の髪が持ち上がっている。個性使ったのか先生……。

それにしてもコードネーム。今まで考えたことはなかった。どんなコードネームにしようか。轟くんはどんなコードネームにするんだろうか。


「というのも先日話した「プロからのドラフト指名」に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2、3年から……。つまり今回来た“指名”は将来性に対する“興味”に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある。」


つまりは精一杯壁を乗り越え続けて期待を越え続けなければならないということ。それは簡単ではないけれど、その程度もこなせないようではプロとしてはやっていくことはもちろん出来ない最低レベルということなんだろう。


「で、その指名の集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが、二人に注目が偏った。」


黒板に映し出された指名件数。グラフが上二つだけ異様に長い。そこに書かれている名前は轟くんと爆豪くん。二人ともこのクラストップの成績だし、頷ける。私はといえば286票。多くは無いけど、注目はしてもらえてるようだ。

この注目を裏切らないように全力で頑張っていかないと、私のなりたいヒーローには絶対になることができない。


「これを踏まえ……指名の有無関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう。おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった。まァ仮ではあるが適当なもんは……」


「付けたら地獄を見ちゃうよ!!この時の名が!世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」


ガラリと扉が開いて入ってきたのはミッドナイト先生。相変わらずすごい戦闘服だ。あれを堂々と着ていられるメンタルすごいと思う。


「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん。将来、自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まり、そこに近付いてく。それが「名は体を表す」ってことだ。“オールマイト”とかな。」


フリップが配られ、みんながそれぞれコードネームを考えていく。私は一体なににしよう。名は体を表す……か。

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