選ぶ基準


「みんな職場体験どこに行くことにしたの?」


「オイラはMt.レディ!!」


「峰田ちゃんやらしいこと考えてるわね。」


「違うし!」


「苗字は指名あっていいよなぁ。」


「でも行きたかったヒーローからの指名はなかったからなぁ。」


「デクくんはもう決めた?」


緑谷くんはブツブツと先ほど受け取った指名が無かった人を受け入れてくれる40のヒーロー事務所の一覧をひたすら眺めている。

相変わらずのその姿を眺めながらこちらは指名の一覧を眺めている轟くんを見つけてぱたぱたと駆け寄った。


「轟くん!轟くんはどこ行くか決めた?」


「いや、まだ考えてる。」


「轟くんたくさん指名来てたもんね!うらやましいけど、負けてられないね!」


轟くんの指名は私のおよそ20倍だ。286のなかからでも頭を悩ませるのに、4000ものなかから1つを選ぶなんてそりゃあ頭を悩ませるに決まってる。


「苗字はどこ行くか決めたのか。」


「うーん、それがまだなんだよね。ほんとは戦闘スタイルが似てるベストジーニストのところに行きたかったんだけど、指名は来てないから仕方ないしどこにしようかなって悩んでたの。」


みんな個性がかなり違うヒーローばかりなのだ。自分の個性や戦闘スタイルと似ているヒーローはもちろん、これから自分がメインとして活動する地域や場所を得意とするヒーローのもとへ行って今からでも関係を築いていくのもいい。

逆に、自分とスタイルも個性も全く違うヒーローのところへ行って自分の可能性を広げるのも悪くない。

ぱらぱらと指名リストを眺めていれば、何故か轟くんが覗き込んでいた。誰か気になるヒーローでもいるのだろうか。


「やっぱ個性の系統が全然違うから、指名もかなり違うな。」


「轟くんはめちゃくちゃ戦闘向きだもんね。私は不意をつかなきゃまともな戦闘出来ないもん。正面からの戦闘はまだまだ課題だなって体育祭で気付かされちゃった。」


「苗字はどっちかっていうと後方支援だよな。」


後方支援か……。そっちを極めてみてもいいのかもしれない。私の個性は、どんな現場に向いているんだろうか。締め切りまでもう少し考えてみよう。

ちょうど予鈴も鳴って次の授業が始まった。みんな職場体験のことばかりを考えているのか、浮き足立っているようで時々先生に叱られながら一日が終わってしまった。

家に帰っても、うだうだ悩んでいたらお父さんが声をかけてくれた。お父さんに相談して、一緒になって全部のヒーローの特徴を調べて、私がどうしたいのかじっくりと話し合って、私が納得のいくまで一緒に頭を悩ませてくれた。

夜遅くまで考えたおかげで、私の行きたい事務所が決まった。私は、私のやりたいことをやりに行く。

提出用紙に記入して、忘れないように鞄に仕舞いこんで、布団に潜り込んだ。職場体験はまだ来週だというのに、今からどきどきしている。みんなも今、こんな気持ちなんだろうか。

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