メダルの重さ
表彰式の時間が来て、一番低い壇上に上れば一番高いところで暴れまわってる勝己がいた。そっと先生になにがあったのか聞いたら、起きてからずっと暴れまわる上に生半可な拘束具では壊してしまうらしく、こうなったそうだ。
会場中の視線が当然勝己に注がれている。
同じく3位のはずの飯田くんは家庭の事情で早退したそうだ。本来なら二人乗るために広めに作られた3位の表彰台は一人だと大きすぎる。
「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
会場に差し込む光が少しかげる。あんなところに立てるのは一人しか思いつかないが、みんなの視線が勝己から離れてそちらへ注がれる。
「私がメダルを持って来「我らがヒーローオールマイトォ!!」」
打ち合わせはなかったんだろうか……。シーン、と静まり返った会場にがっしゃがっしゃと勝己が鳴らす鎖の音が響き渡る。
気を取り直して前を向けばオールマイト先生が目の前にいた。少し頭をさげて、メダルをかけてもらう。
「苗字少女おめでとう!爆豪少年との戦闘は見事だった!個性に頼りきらない戦闘スタイルはいざというときに役に立つ。これからもその調子で頑張るんだぞ!ただ、もっと個性の扱い方、特に自らの体で戦うときこそ個性の力をもっと使っていくといい!」
首にかかったメダルの重さと、かけてもらったアドバイスを心に刻んでオールマイト先生の大きな体に抱きしめてもらう。
私はヒーローになれる可能性のある個性をもったヒーローの卵だけれど、それ以前にただ一人の人間で、女なのだ。
体格も恵まれていないし個性の乗らない攻撃なんて、いくら鍛えても男にはなかなか勝てない。そこをどう個性でカバーしていくか。それを今後の課題にしていこう。
決意を新たにぐっと前を向けば、二つ隣で轟くんが、決勝で炎を消してしまったワケを話していた。勝己が納得いっていないのは、それのせいなんだろう。
静かに、それでいて決意の現れた言葉が轟くんらしい。それはオールマイト先生も感じ取れたらしく、私と同じように抱きしめていた。
「さて、爆豪少年!!っと、こりゃあんまりだ……。伏線回収見事だったな。」
落ち着いた轟くんとは180度真逆。破壊の限りを尽くすような暴れっぷりはオールマイト先生が目の前にいても変わることは無かった。
「オールマイトォ、こんな1番……何の価値もねぇんだよ。世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!」
横目で勝己を見れば、ようやく喋れるようになったせいか怒りの全てを吐き出しているようで、顔がすごいことになっていた。
あんなにキレてる勝己は久しぶりに見るかもしれない。
「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。受け取っとけよ!“傷”として!忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろが!!」
全力でメダルを受け取るのを拒否してる。面白すぎるから今すぐムービーをとりたい気持ちを落ち着かせて静かな攻防を目に焼き付ける。
勝者は当然オールマイト先生。口にメダルをくわえさせられた勝己は間抜けだ。
「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下さい!!せーの!!」
「「「プルスウル「おつかれさまでした!!!」」」」
……うん、オールマイト先生は時々天然だ。
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