目下ライバルは
爆豪くんの得手、それは自身の個性の力で推進力を生み出し、空を飛ぶことで機動力と攻撃力を兼ね備えていること。
そして、言い換えれば爆破の推進力がなければ前には進めない。
新たに硬度の高いテグスを出してそれを爆豪くんの腕に巻きつける。引いてダメなら押してみろ!
「負けるわけにはいかないの!ごめんね!」
勢いよく爆豪くんの腕を両方とも体の前に強引に持っていく。そのまま両腕をあわせてテグスを巻きつければ簡易的な拘束具だ。
訓練を重ねたからって一朝一夕で強固になるわけではない。けれど、切島くんみたいな個性ならいざ知らず、爆豪くんならきっと切ることは叶わない。
予想通り、爆豪くんの推進力は後ろ向きにかかって遠ざかっていく。爆豪くんにまきつけた二本のテグスを切って、真っ直ぐオールマイト先生のいる場所へと向かう。
青山くんもかなり進んできているようだったが、1秒以上の噴射が出来ない以上私に有利だ。
結果として、私は一番にオールマイト先生の下にたどり着いて無事1着を手に入れることが出来た。
「苗字少女、どうして爆豪少年を妨害したのか、聞いてもいいかな。」
「はい。オールマイト先生を被害者、もしくは敵のターゲットと考えた場合、敵よりも早く被害者の元へと急行する必要がありました。敵側に一度とらえられるとヒーローの増援が必須となり、それだけ時間がかかるので、場合によっては被害者の生死すら危うくなってきます。なので、今回のケースだとそれぞれが競っている、という状況だったので自分以外を敵と仮定しました。なので、最も危険だと判断した爆豪くんを妨害しました。」
「確かにそういうケースもあるね!うん、よく考えている!でも、捉えた敵をそのまま放置はよくないから、アフターケアまでしっかりな。」
確かに、私は爆豪くんがもう追いつけないと判断した時点で目的にだけ向かっていってしまった。まだまだ、もっと考えなければ。
次いで始まった第三組は切島くん、砂藤くん、響香ちゃん、透ちゃん、上鳴くんと機動力にはイマイチ欠けるメンバー同士となった。
前2つの組とは全く違った展開に全員の視線が集中する。これはこれで頭を使わなければ勝てない勝負だ。
「苗字。」
「轟くん!私の個性の使い方、どうだった?」
「すげぇな。職場体験の効果か。それに妨害も。」
「ヒーローには、考え方を教わっただけ。観察して、得手不得手を見極めなさいって。妨害は……しなきゃ勝てそうに無かったから。」
「でも爆豪も理由に納得したからあんまり怒らなかったんだろ。」
確かに、ゴールに到着した最初はこれでもかというほど怒鳴られた。でも、私がオールマイト先生に説明をしたあとは苦虫を噛み潰したような顔でこっちを睨みつけるだけだった。
それはつまり納得した、ということなんだろうか。
それよりも、体育祭以降こうして話しかけてくれる轟くんについ顔がにやけてしまう。
「私、やっぱり轟くんのこと好きだなぁ……。」
「直接聞くのは久しぶりだな、それ。」
「えっ、私声に出て……!!」
予想していなかった轟くんの反応に慌てて轟くんを見たら、なんだかすごく優しい表情に見えて顔が赤くなっていく気がした。
そんなことをしているうちに第三組もゴールしていたらしくて、響香ちゃんが一番だったらしい。
第四組で呼ばれていった轟くんの背中を穴があきそうなくらい見つめたまま、さっきの表情と言葉の意味をぐるぐると考え込んでしまう。
最終第四組の競争の様子なんて、全く頭に入ってこないくらいには、轟くんのことが頭を占めていた。
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