消えた日常


結局、休日を使ったババァ案はうまくいかなかった。出かける時にババァが異常にニヤニヤしてたからむかついたのもあったが、そもそも誰かと二人で出かけるなんて初めてだったのだ。

制服姿ばかりを見慣れていたからか、私服の名前はいつもと違って見えて、違和感を覚えた。

他に場所が思いつかなくて木椰区ショッピングモールに来たが、これがそもそもの間違いだった。

モブが多い。クソうぜぇ。

途中立ち寄ったスポーツショップでは名前がどこか行こうとしていたから捕まえた。今日はとにかくてめーのことなんか好きじゃねぇとわからせるためなんだ。少しでも名前と一緒にいねぇと意味がない。

結局1日フラフラしているだけだった。途中で背中に衝撃を二度ほど感じてイラついたくらいで、好きだとか好きじゃないだとかは答えが出なかった。

一度目の衝撃のとき見えたうっすらと色づいた表情が、新しく頭にこびりついただけだ。

この数日で名前の新しい表情をいったいいくつ見ただろうか。こんなに名前は表情がコロコロと変わるやつだったか。

どうすれば名前が道端の石ころだと再認識出来るだろうか。考えても考えてもいい案はでてこなかった。

名前と分かれて帰宅すれば、モブの多さにくたびれたのかババァがどうだったのなんて言っていたのも無視して部屋に閉じこもった。

いい案が出てこない以上、手当たり次第にやっていくしかない。また明日も慣れない道で登校するかと決めて眠りについた。




土曜日と同じ時間、名前の家の前にいた。だのに、土曜と同じ時刻になっても名前は出てこなかった。何度も何度もチャイムを鳴らしたが、依然出てこなかった。時計を見れば電車ギリギリだ。1本くらいなら電車を遅らせても大丈夫かとまた、チャイムを鳴らした。



結論から言えば、名前はあのあと出てこなかったので、ギリギリ学校につくレベルで登校した。教室に行けば、何故かそこにもう名前はいて、デクや丸顔と話していた。

むかついて睨んでいたら名前と目があった。そして、逸らされた。異常に腹が立った。


それから休み時間になる度に名前は丸顔とずっと話していたり、すぐさまどっかへ行ったりしていて、話しかけることも出来なかった。

それが更に腹立たしかった。クソ名前の癖に俺を避けてんのか。

そう結論が出るのも遅くなかった。なにせ名前の行動はあからさまだ。目が合えば逸らされる。すぐにいなくなる。

昼休みもギリギリまで戻ってこなかった。イライラしてるのが自分でもわかる。周囲も感じ取っているのだろう。誰も俺の周りへ来ない。ときどき後ろからデクの視線を感じるくらいだ。うぜぇからこっち見んな、クソが。


帰りだ、帰りはぜってぇ逃がさねぇ。


仮に逃げられても家を知ってる俺が有利なことに変わりねぇ。名前の癖に俺から逃げるとか許さねぇ。

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