とびでた二人
「「「すっげー!!USJかよ!!?」」」
自動扉をくぐった先の光景に、必然的にテンションがあがってくる。これだけ様々な災害が想定されているなら、私の個性の活用方法も考えられるかもしれない。
「水難事故、土砂災害、火事……etc.あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も……ウソの(U)災害や(S)事故ルーム(J)!」
スペースヒーロー13号がそこには立っていて、説明をしてくれた。もう一人の先生は13号先生のことだったのか。
13号先生のお小言を聞きながらまた勝己をちらりと見たら、少しだけ怖い顔をしていた。勝己も私と同じで攻撃系の個性だ。
そして、最大威力でぶっ放し続ければ人は簡単に死ぬだろう。私の個性なんて、もっと簡単に人を殺せる個性だ。
13号先生の言葉を噛み締めて、視線を落とした。
「この授業では心機一転!人命の為に“個性”をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。助ける為にあるのだと、心得て帰ってくださいな。」
そう、そうだ。活用方法を考えなければいけない。落とした視線を上げていろいろと考えてみる。
けれど、どれも机上の空論でしかないので実践をもって考えて行きたい。
そう決意したときだった。
「一かたまりになって動くな!」
相澤先生の言葉に驚いて体が硬直する。広場のほうを見れば、たくさんの人。まだまだ増える人は、なにもない空間から現れている。
「動くな、あれは敵だ!!!」
切羽詰ったような相澤先生の言葉に、ぞっと背筋が凍った。言いようのない恐怖に呼吸すら忘れてしまいそうだった。
13号先生に私たち生徒を任せた相澤先生が敵の集団に突っ込んでいく。これが、プロの世界。こんな悪意に満ちた、どう考えても不利な状況でも、守るものがそこにいる限り立ち向かわなくてはならない。
相澤先生の戦いを見ていたかったが、これは授業でもなんでもない。避難をするためにじり、と足を下げる。
方向を変えようとしたそのとき、ゾワ……と目の前にモヤが広がった。これは、さっき敵たちが出て来ていたものと同じ。
一人の敵の個性だ。
「せんえつながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。」
モヤの中心から声が聞こえてくる。オールマイトの死を望むという、敵の目的に足が竦んでしまう。
そんな私たちを守るように、13号先生が戦闘用意をするのが見えた。
ほっとしたのもつかの間、勝己と切島くんが飛び出して、モヤの中心に攻撃を仕掛ける。
「ダメだどきなさい、二人とも!」
二人が飛び出したことで攻撃のチャンスを失った13号先生が叫ぶ。しかしその一瞬の隙を敵が見逃すはずもなく、一気にモヤが伸びる。
頭で考えるより先に、勝己に向かって足が進んでいた。
「勝己のばか!なにやってんの……!」
モヤが勝己と切島くんを覆っていく。飛び込んだ私に気付いたのは切島くんで、勝己に伸ばしたはずの腕は切島くんが掴んで、引き寄せられた。
そのままモヤに飲み込まれた私たちは、なすすべなく落下の感覚で生きていることを実感した。
「ありがとう切島くん……!」
モヤに包まれる前に切島くんが抱き寄せてくれていたから、そのまま落下した私は切島くんの腕の中で怪我もせず、即座に状況の把握にうつれた。
勝己も傍にいて、ここにいるのは私たち3人だけのようだ。にやにやと下卑た笑みを浮かべる人相の悪いやつらに囲まれている。
こいつらは間違いなく……
「敵だ!」
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