突然の来訪者
あれだけの事件があったということで、学校では現場検証やらが行われているらしく、臨時休校となった。
急な休みですることがなかったので、ごろごろしていたのだが、昨日勝己を無視してしまった事実を思い出して自己嫌悪に陥ってしまいそうだった。
結局ベッドから起き上がった私は、そのままいつもは後回しにしてしまいがちな、細かい掃除や整理を始めてしまった。
ぱたぱたとはたきを振っていれば、チャイムの鳴る音が聞こえてインターホンまで走っていった。
平日の昼間に誰だろうと受話器を持ち上げれば、画面に映ったのは勝己で慌てて受話器を元に戻した。
しかし、どうやら切ったときのガチャリという音が入っていたのか、私が家にいることに気付いた勝己がチャイムを連打してくる。
あまりのうるささに、扉を開けるしかなかった。
「うるっさい!何しに来たの。」
扉を開けて文句を言えば、勝己は返事をするでもなく強引に入ってきた。どこの悪徳セールスマンだ。
「名前、なんで昨日無視した。」
「最初に無視したの勝己でしょ。」
靴を脱いでリビングに向かった勝己を仕方なく追いかけていく。かって知ったるとばかりにずんずん突き進んでいく勝己を止める術はわからなかった。
「もう一回聞くけど、何しに来たの。」
「別に。」
はっきりとした答えを返さない勝己をこれ以上問いただしてもきっと答えてはくれないので、聞くのは諦めてさっきまで掃除していた続きをやろうと勝己に背中を向けたら、後ろに引っ張られてソファにしりもちをついた。
立ち上がろうとしても、勝己に邪魔されて立ち上がれない。
かといって、なにかを言いたそうにするだけで、なにを言うでもない勝己は意味がわからなかった。
しばらく沈黙が続いた後、静寂を止めたのは勝己のスマホのバイブ音だった。
鳴り止まないバイブ音に勝己は舌打ちをして画面を見た。そして、切った。
それから間をおかずに今度は私のスマホが鳴って、ポケットから取り出せば勝己ママの名前。
勝己の腕が伸びてきてスマホが奪われそうになって慌てて勝己を個性で静止させる。
「も、もしもし!」
『あ、よかった。名前ちゃん、そっちにうちの馬鹿行ってない?』
「来てますけど……。」
『なにかしてた?してないなら買い物いくから荷物持ちしに来いって言ってくれる?』
スマホのマイクを手で隠し、口元から離して勝己に向かって勝己ママの言伝をそのまま伝えた。もちろん、もう個性は解いてある。
「ふざけんな、行かねぇ。」
「らしいですけど。」
『じゃあ電話勝己にもう一回かけるから、出なかったら名前ちゃんのとこまで迎えに行くからって言っといて。』
そう言って勝己ママは電話を切ってしまった。
「勝己ママ、もっかい勝己に電話するから、出なかったら家まで迎えに来るって。」
「は!?ふざけんなよ、ババァ……。」
そうこうしていたら、宣言どおり再び鳴った勝己のスマホにしばらくにらめっこしたあと、耳に当てていた。
ちょうどいいとソファを立ち上がって掃除に戻る。今度は止められなかった。
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