想像×妄想


勝己ママはなかなかの買い物をしたみたいで、勝己は両手に荷物を持たされている。ぎゃんぎゃん文句を言う勝己も、勝己ママからすればいつものことなのか一喝だけして黙らせている。私もあの技ほしい。


「私、荷物置いたら伺いますね。」


いつもの交差点で自宅方向を指差しながら伝える。勝己ママがゆっくりでいいよ、と言ってくれたが夕飯の準備だってあるだろうし、せっかくの休みだし誘ってもらったし、手伝わないわけにはいかない。

カゴのときから重たかった荷物を持って、やっとの思いで帰宅した。こういうときお茶子の個性があったら楽なんだろうなって思ってしまう。

買ってきたものを所定の位置に片付けながら、ぽんぽんと頭に浮かぶスーパーでの出来事に顔を赤くさせる。

誰が想像できただろうか。勝己ママの調教の賜物とはいえ、買い物カゴを持ってくれて、お金を払ってる間に鞄奪ってまで先に詰めてくれるなんて。


「落ち着け、私……!」


スーパーでの出来事から、派生していく想像は現実には起こりえないからこそ止まることはなかった。

ぶんぶん頭を振って調味料を棚にしまっていく。想像を頭の片隅に追いやってエコバックの代わりにいつもの鞄を持って家を出る。

まだまだ日は高いのに、こんな時間からお邪魔してしまっていいのだろうか。と思いつつも、休日も勝己といられることが嬉しくて足取りは軽くなった。



爆豪と書かれた表札の横のインターホンを押せば、私だとわかっていたのか受話器越しの声は聞こえず、そのまま扉が開いた。


「お邪魔しまーす。」


「いらっしゃい。」


勝己ママに出迎えてもらって部屋に引きこもってるらしい勝己を呼んでくるか聞かれたけど、あえて話すことはないし断った。

勝己ママと最近どんな授業があったとか、USJの話だとかをたくさんした。勝己はほとんど学校のことを話さないみたいで、真剣に聞いてくれた。

親が家にずっといてくれたらこんな風に話したんだろうか、と考える。でも、想像なんて全く出来なくて、ソファに背中を預けた。


「名前ちゃん、今日エビチリだけど大丈夫?」


「あっ、はい、手伝います!」


立ち上がった勝己ママに時計を見ればいつもなら私も仕込みを始める時間だ。慌てて立ち上がって袖を捲くる。


「あら、そう?ならお願いしようかな。」


炊事なら自炊もするし、お手の物だ。とはいっても勝己ママみたいに美味しいものはなかなか作れない。世のお母さんには本当に頭が下がる。

勝己ママとおしゃべりをしながらトントンと包丁を鳴らしていれば、リビングの扉が開いて、飲み物でも取りに来たのか勝己が立っていた。


「なんでてめぇがそこにいんだよ。」


「ただ食べさせてもらうなんて悪いでしょ。」


変な感じだ。いつも食事は一人で適当に作って一人で静かに食べているのに。
下準備も終われば、勝己パパも帰ってきて、娘が出来たみたいなんて言われて嬉しくなった。

食卓に並んでいく料理を見て、それも褒めてもらって、頬を緩めていたら勝己に蹴られた。

勝己の隣に座って、勝己には文句を言われつつ、勝己ママとパパには褒めてもらって楽しい夕食は終わってしまった。

あと片付けは勝己の仕事らしいので任せて、私は帰る用意を整えていた。先に帰ろうとしたら勝己ママに引き止められて勝己を呼んできた。

どうやら、また送ってくれるらしい。

- 31 -


(戻る)