個性の活用方法


臨時休校となった昨日は、しっかりと寝て体力を回復させたあと、いてもたってもいられず体力が尽きるまで走り続けていた。

汗だくで家に帰ったらお父さんはびっくりしてすぐにお風呂の用意をしてくれた。

走っている間に考えていたのは、個性の活用方法と、限界についてだ。

この間の授業では、たまたま今まで考えて、練習してきた活用方法がぴったりだっただけで、実戦はまだまだだ。耐久温度の上限と下限は?強度はどこまで強く出来る?個性に頼りきらない戦い方はどんなものがある?

考えても考えてもキリがなくて、深いため息をついた。これではヒーローになるなんておこがましいくらいだ。轟くんの隣にも、立っていられない。


「何よりまだ戦いは終わってねぇ。」


戦い、という言葉に意識が戻る。そうだ、今はHR中だった。顔に包帯をぐるぐる巻いたさながらミイラ男の相澤先生が続けた。


「雄英体育祭が迫ってる!」


わっと教室中が盛り上がった。戦いというから張り詰めた緊張は確かに解された。


「体育祭か……。」


「楽しみね。」


体育祭まで二週間。それまでになんとしても攻撃方法の確立と、個性の限界を知っておかなければならない。

やることは山積みだった。






「苗字、ちょっといいか。」


セメントス先生が出て行ってお昼だと鞄を漁っていたところで、轟くんに声をかけられた。私から声をかけることはあっても、轟くんから声をかけてきたのは初めてかもしれない。


「轟くん!なに?告白の返事ならいつでも……、」


「この間言ってた手合わせ、頼めねぇか。」


私の言葉は遮られた。くそう。


「いいよ!いつやる?私も轟くんにお願いしたいこと、あったんだよね。」


「わかった。なら2、3日中にトレーニング室を押さえとく。急にやるって言ってもいけるか?」


「うん、大丈夫。」


「なら、押さえられたら頼む。」


用件を終えると轟くんは食堂へと言ってしまった。これで上限と下限は調べられる。強度はまだ鍛錬してからで構わないかな。切島くんにも、今度相手を頼んでみよう。


山積みの課題を一歩ずつ片付けていくしかない。2週間の準備期間では体育祭までに実りのあるものには出来ないかもしれないけど、鍛錬も挑戦も、今以上に早く始められるタイミングなんてないのだ。

鞄からお弁当を取り出してお昼ご飯にする。最近の私が変なのを心配してくれたお父さんの愛情たっぷりのお弁当だ。


今まではなんとなく使ってきた個性を、しっかり根幹から捉える必要がある。強度の選択だって、今は太さを変えることしかしていない。

もし、お母さんの個性が少しでも私の中に息づいているとしたら、爆発的に強化できるかもしれない。でも使い方がわからない、聞くことも出来ない。真っ暗闇を手探りで探る感覚。

怖いけど、やるしかない。私が目指すヒーローになるために。

見守っててね、お父さん、お母さん。私絶対やってみせるから。

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