ジェットコースター爆豪


『オイオイ第一関門チョロイってよ!!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーール!!』


マイク先生の声が響き渡る。目の前には奈落の底まで繋がっているんなじゃいかと錯覚するほどの穴。

梅雨ちゃんが一足先に綱を渡っていく。轟くんはもう大分先だ。穴など関係ないと、爆豪くんもものすごいスピードで追いかけている。

私だって、負けてられない。横でサポート科の人が飛んでいった。あれなら私も応用して出来るかもしれない。

綱を確認すれば、かなりしっかりしている。これならとテグスを巻きつけて穴へと飛び降りる。ピーンとはったテグスが、体を支える。

振り子の要領で体は前へと進んでいく。綱とテグスは滑りが悪いようで、摩擦熱がかなり生まれているようだ。このままでは切れてしまう。

見えないけれどやるしかないと、テグスを綱の根元へと巻きつけて体を引っ張りあげる。


『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!』


まだ二つ目の足場へついたところだというのに、放送が聞こえてきて轟くんが抜けたことを知る。顔をあげれば爆豪くんももうその近くまで行っている。

イチかバチか、ものすごい勢いで進む爆豪くんにテグスを伸ばす。足場のギリギリまで行って爆豪くんにテグスを巻きつけることが出来た。

伸ばしきったテグスを巻き取る、と体がものすごい勢いで前に引っ張られる。巻き取る勢いだけではない。爆豪が前に進む力が強いのだ。


「アァ!?んだてめぇくっついてんじゃねぇ!」


さすがに人一人の重さがかかればバレてしまった。しかし、念のため透明のテグスにしたおかげで、個性を解くことはできないらしく、暴言だけが飛んでくる。


「速い速い速い!!怖い!!」


「うるっせぇ!落ちろ!」


大分巻き取ったテグスのおかげで爆豪くんはかなり近くにいる。おかげで爆発の熱風さえ感じられる。熱い!!


『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!現在先頭はは1-A、轟ィ!すぐ後ろに同じく1-A爆豪、苗字と続いて……って苗字の体勢おかしくねぇか!?』


そりゃそうだ、どうあがいても爆豪くんに引っ張られている私は腕が先行して進んでいる。想定以上の速度で進んでしまってバランスなんて取っていられないのだ。

マイク先生の放送のせいなのか、爆豪くんの位置が知りたかったのか、轟くんがこちらを振り返った。そして、すぐに前を向いてしまった。


『おおっと!先頭は早くも最終関門!!一面地雷原!怒りのアフガンだ!!』


必死に前方を確認すればテグスを巻けそうなところはなかった。それに、地面に地雷が埋まっているなら、このまま爆豪くんにくっついて空中を移動するほうが得策だ。

現に轟くんも地面を見ながらゆっくりとしか進めていない。


「はっはぁ俺は関係ねーー!!」


「轟くん今は負けられないのごめんね!!」


爆豪くんがものすごい勢いで轟くんの横を通り過ぎていく。私も声をはりあげて轟くんに声をかける。いくら好きな人だからって、こういうところで勝ちを譲ってあげられるほど甘くはない。


「てめェ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ。」


轟くんと爆豪くんがにらみ合ってる。その視線に私は入らない。敵ではないということなのだろうか。


『ここで先頭がかわったー!!喜べマスメディア!おまえら好みの展開だああ!!』


マイク先生の言葉とほぼ同時に、引かれるスピードが落ちた。見れば、轟くんと爆豪くんが腕を引っ張りあっている。ようやく離れるタイミングが出来たとテグスを解いて地面に目を凝らす。確かによく見れば地雷の位置はわかるようだ。

なんとか地雷を避けて着地する。背後ではボンボンと地雷が爆発する音が聞こえる。先頭二人は着地のタイムロスのせいで少し先にいる。


二人にとって私が敵でないと思われているのが、悔しくてならない。こんなに近くにいるのに、そこまでの実力がないといわれているようで、悔しかった。

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