悔しさの残る結果


最初のロボで痛めた肩が、爆豪くんに引っ張られ続けたせいでさらに痛みを生み出していた。ぐっと歯をかみ締めて前を向く。


『苗字どうした!?一気に速度が落ちたぞ!!先頭二人がかなりリードしている!ここから追いつくのはさすがに無理か!?』


なにか策はたてられないか。必死に頭を働かせるも、痛みがそれを邪魔してくる。結局目を凝らしながらすすむことしか出来なくて、歯がゆい。

前の二人は喧嘩しながらどんどん進んでいく。やっぱり、すごい。私も、と思った瞬間、背後で大爆発がおこった。地雷一個分ならこんな音はしない。いくつかまとめて踏んだのだろうか。


『偶然か故意か、A組緑谷爆風で猛追ーーー!?』


振り返れば、爆発の衝撃で生じた土煙の中から、緑谷くんがものすごいスピードで飛び出してきた。

そしてそのまま……


『抜いたあああああー!!』


先頭だった二人は喧嘩をやめて、前を行った緑谷くんを追いかけていく。私も追いかけなければと思うのに、有用な策が思いつかない。

パキパキパキ、と音がして地面が凍っていく。轟くんもなりふり構ってられないようで、地雷を防いでどんどん前進する。

自分の個性で上手くいかないなら他人の個性も最大限活用しなければいけない。

すぐに進路を変えて轟くんの作った氷の道の上へ乗った。この間の二人っきりの戦闘訓練。そのときに滑って転んでしまったのも記憶に新しい。

滑らないように気をつけながら進むのは集中力がいったが、どこにあるかわからない地雷を避けながら進むよりはよっぽどいい。

緑谷くんの速度も落ちてきた。これなら追いつけるかもしれない。そう思ったのは一瞬で続けざまに起きた爆風で少し押し戻されてしまった。

その隙に緑谷くんは地雷原を突破したようで、マイク先生の声が聞こえる。

これ以上のタイムロスは許されない。轟くん、爆豪くんと通過していく地雷原を轟くんの作った道を通ってなんとか抜けきった。


『さァさァ、序盤の展開から誰が予想出来た!?今一番にスタジアムへ還ってきたその男―――……緑谷出久の存在を!!』


マイク先生と前方から聞こえてくる大歓声に緑谷くんがゴールしたことを告げている。轟くんの道のおかげで後続もすぐ傍まで来ている。

あと少しだと言い聞かせて痛みを堪えてスタジアムまでの道を駆け抜ける。周囲を見渡せば、前を走っていた三人しか見当たらない。どうやら、四位での通過が出来たようだ。

ぜぇぜぇと切れる息を整えようとスタジアムの壁に寄りかかる。続々とゴールしてくる面々を見ながら深く深呼吸していく。

少し落ち着いたところで中央へと向かえば、轟くんが隣に来ていた。


「爆豪にくっついてたのか。」


「第二関門で、追いつけないと思ったから咄嗟に。でも二人とも私なんて敵じゃないって感じだったから、悔しかった。」


「大きな障害物さえなければ苗字に抜かれることはないと思ってたからな。」


「機動力には自信、あったんだけどなぁ。」


呼吸が落ち着いて一気に噴出してきた汗を、体操服の裾で拭う。轟くんの表情は涼しげだ。個性もあるんだろうけど、ちょっとだけうらやましい。


「ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい!」


いつの間にかスタジアムには大分人が戻って来ていた。そろそろ締め切られたのだろう。着順が目の前に表示された。


「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!」


私の順位は予想通り四位だ。一位の緑谷くんは放送で聞こえていたけど、轟くんは爆豪くんにも勝って二位だったらしい。


「轟くん二位なんてすごいね……。」


「クソ親父も見てるから、一位狙ってたんだけどな。」


轟くんの声がどこか冷たく感じて、顔を上げたらいつもの表情じゃなくて、憎しみを感じさせる表情だった。見たこともないそれに言いようのない不安が襲ってきて、ぎゅっと自分の体操服を握り締める。


「さーて第二種目よ!!私はもう知ってるけど〜…何かしら!?言ってるそばからコレよ!!」


バーンと表示された言葉は騎馬戦だった。これならまだ、私の個性も活躍できるかもしれない。

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