いつかの対ロボット戦
「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう。いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!!さて運命の第一種目!!今年は……コレ!」
ミッドナイト先生の指の先には『障害物競争』の文字。全生徒が出場する予選。ここから一体何人が本選へと残れるのかわからない以上、出来る限り上位に残る必要がある。
例年通りなら20〜40名というところだろう。10位くらいを目指すのが目立ちすぎずベターなラインだろう。
コースさえ守れば何をしたって構わない。そんな障害物競走。今ここにいる全員が敵なのだ。
「さあさあ位置につきまくりなさい……」
A組のみんなは大分前の方に陣取っている。このスタートゲートの狭さなら納得できる。
が、目立たないのが本選へ向けての布石になることだってある。それに、轟くんや瀬呂くん、峰田くんあたりの個性に行動不能にされてはたまらない。他のクラスの人の個性だってわからないんだ。迂闊に前に行きたくはない。
『スターーーート!』
いつの間にかカウントダウンが始まっていたようで、掛け声と共に一斉にスタートゲートに向かって全員が走っていく。
そんな中動かずに詰まってしまったゲートを見てから足を動かし始める。雄英はなんでも大きいのだ。それは様々な個性の人がいるからに違いないのだが、このゲートも大きすぎる。上ががら空きなのだ。
蒸発させた水分を手のひらに集めて一気に噴出する。ふわりと浮いた体は詰まった人々の頭上へと上っていく。
「ごめんなさい。悪く思わないでね。」
ぱっと見頑丈そうな人を選んで肩を踏ませてもらう。人の上をすいすい進んでいれば前方から悲鳴が聞こえる。凍った!っていう声が聞こえるから轟くんがやったんだろう。
「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」
勝己の声が聞こえる。ゲートの中にいる私にまで聞こえるってどれだけ大声を上げたんだろうか。でも、これで大分距離感がわかった。思ったより引き離されている。トントンと更にリズムをあげて最後の一人を蹴れば、ゲートを抜けて着地した。
『さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め……第一関門ロボ・インフェルノ!!』
先頭は第一関門にたどり着いたんだろう。聞き覚えのある名前だ。やっと前方集団に追いついたと思ったら、目の前には入試のときの0Pロボ。
轟くんは一気にロボを凍らせて通り抜けていく。後に続こうとする人たちを止められるだけ静止させた。あの傾きだとまず倒れてくる。
『1-A轟!攻略と妨害を一度に!こいつぁシヴィー!!』
大きな音を立てて倒れたロボの下に、誰か潰されたような気がした。急いで助けようと近寄ったら中ほどから硬化した切島くんが飛び出してきた。
切島くんでよかった。更にその横からB組の宣戦布告に来た人も出てきた。
『A組切島にB組鉄哲も潰されてたー!ウケる!』
二人とも硬くなるのか。鉄哲くんは見たまんま鉄化できるんだろうか。なかなか強い個性だ。
「とりあえず俺らは一時協力して道拓くぞ!」
誰かが声をあげた。ここを突破するにはそれが一番だろう。周囲を見渡せば上鳴くんがいた。彼は私と相性がいい。後ろに向かって駆け出したら横を勝己が通り過ぎていった。
『1-A爆豪、下がダメなら頭上かよー!!クレバー。』
ボボボボ、と爆発を繰り返してロボの頭上へと飛んでいく勝己を追いかけるのは、機動力の高い瀬呂くん、そして常闇くんだった。
いい作戦ではあるが、私の個性ではあそこまで飛んでいくことは出来ない。最初の作戦通り、上鳴くんと強力するしかない。
「上鳴くん!私の作戦にノる気ない!?」
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