初めての共闘


どうやら、さっきの予選の順位でポイントが与えられるらしい。一位の緑谷くんは1000万ポイント。正直二位以下との差がありすぎて、実質それの争奪戦だ。

それは、皆が思ったらしく、チーム決めになったのに緑谷くんの周りには、誰もいない。

私の個性なら、守るより攻めるほうに使える。たぶん緑谷くんは守りに専念するから、声がかけられることはないと思うが、念のため目を合わせないようにする。

それより、騎馬戦なんて合法的に轟くんに触れられるチャンスをみすみすどぶに捨てたくないし、轟くんのポイントと合わせれば、高ポイントになって守るもよしになる。


「轟く……あれ、いない。」


さっきまで隣にいた轟くんはもうそこにいなくて、きょろきょろと辺りを見回した。上鳴くんと話している轟くんがいる。


「轟くん!一緒に組もう!相手にバレないでハチマキ奪えるよ!」


「悪ィ、もう組み終わったから別のやつと組んでくれ。」


息巻いて声をかけたのはよかったものの、即座に断られてしまった。緑谷くんと話していたらしい飯田くんが轟くんと上鳴くんの傍に行く。

どうやら、轟くんは飯田くん、上鳴くん、八百万さんと組んだらしい。攻守速において、万全の布陣だ。ここに私が入る余地はなかった。

肩を落として周囲に目をやれば、もうほとんど組み終わってるみたいで、どのチームも作戦を立てているみたいだ。

誰かいないかと必死に目を凝らしていれば、尾白くんが一人でぼんやりしているのが見えた。もうこうなったら役割がどうのとか、考えてられない。


「尾白くん!一人?一緒に組もう!!」


ばっ!と駆け寄って声をかけるも、尾白くんは微動だにしない。まるで私の声が聞こえてないみたいだ。さすがに触れれば気付いてもらえるだろうと腕を伸ばしたら、見知らぬ人が間に割って入ってしまって、尾白くんには届かなかった。


「彼は俺と組んでるんだけど、きみは?」


「えっ、あ、ごめんなさい!私はA組の苗字です。」


「あぁ、四位の。」


「もしまだ四人になってないなら組ませてもらえませんか?私、個性がテグスで透明の糸みたいなの出せるんです。それで気付かれずにひょひょいっと取れちゃうと思うんですけど。」


ぴくり、と目の前の男の子の肩が揺れた気がした。そういえば、彼を一度見たことがある気がする。そうだ、USJの事件のあと、人だかりになっていた中で、ヒーロー科を目指してたって言ってた……。


「すごい個性だね。俺からも是非頼みたい。」


ヒーロー科を落ちたとはいえ、今ここにいるということは、ロボに対して相性の悪い個性だったのか。どちらにせよ、強いことに変わりはないんだろう。


「よろしく。えっと……」


「普通科、心操。」


「心操くんね!」


握手を交わしてようやくチームが決まった。チームメンバーは心操くんを騎手にして、私と尾白くんとB組の庄田くんで騎馬を組むらしい。

左右で騎馬の高さが出るとやりにくいから、という理由で前騎馬は私になった。手が後ろにあるから、個性を使っていることもわかりにくい、というのもあるらしい。


作戦としては、最初は鉢巻を取られてもいい。むしろ取られて0Pの有象無象に紛れてしまって終盤に私の個性で一気にポイントを奪う予定と聞かされた。

1000万はあえて狙わない。そのほかのポイントを集めて確実に目立たず通過が目標だそうだ。


「残り数秒になったら、ポイントを取る。どのチームから取るかは俺が指示するから。」


轟くんとは組めなかったけど、結果オーライかもしれない。絶対に勝ち上がって、一位になってみせる。

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