戦況を見定める


『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!』


「じゃあ心操くん、指揮よろしく……!」


マイク先生のアナウンスで気合が入る。どのチームも同じようで精神統一を図りながら視線は緑谷くんに向かっている。ほぼ全てのチームがやはり緑谷くんの持つ1000万ポイントを狙っているようだ。


『START!』


開始の合図が響くと皆が一斉に緑谷くんたちの方へ向かって走り始める。一体何組が向かっていったんだろう。そんな中私たちはというと、少し離れたところで行く末を見守っている。それぞれの騎馬の個性と、所持ポイントを見定めるためだ。

A組の個性は知り尽くしている。心操くん曰く、心操くん以外の普通科は残っていないらしい。経営科はもともとほとんどが参加していないから、ここにいるとは思いにくい。サポート科はサポート用品を付けているからわかりやすい。たぶん、緑谷くんのチームの騎馬のあの子だけ。

残りは全部B組だ。そして、そのB組こそ同様に実戦訓練も行ってきていて強敵になりうる。今後も見越してじっくりと観察させてもらう。


「苗字さん、ちょっと動くよ。ずっとここにいたら不審だ。人ごみに紛れていく。ポイントを取られてもかまわない。ポイントの動きさえをしっかり見ていれば、勝てる。」


冷静に指示が下る。ゆっくりと動き始めた騎馬は最初こそぎこちなく足並みの揃わなかった私と尾白くん、B組の庄田くんだったが徐々に動きがスムーズになっていく。それにしてもどうしてこの二人は声をかけても返事をしてくれないんだろう。


『さ〜〜まだ2分も経ってねぇが早くも混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねぇ!!』


B組の人たちの動きを見るのに、緑谷くんはいい的になってくれている。続々と狙いに行く騎馬を見つめる。しかし、どうもA組ばかりだ、B組は一体なにをしているのか。視線を周囲に向けようとしたとき、緑谷くんたちが飛んで、そこへ爆豪くんが攻撃をしかけていて目を奪われてしまった。


「A組ってあんなやつらばっかりなの。」


「いや……あれは特別……かな?」


心操くんがどこかあきれたように問いかけてくる。さすがに爆豪くんの突拍子の無さや手段の選ばなさは特別だと思いたい。


『やはり狙われまくる1位と猛追をしかけるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持Pはどうなってるのか……7分経過した現在のランクを見てみよう!』


心操くんが上で少し動いた気がした。モニターを確認すれば、上位チームはほとんどがB組だ。緑谷くんばかりを見ていたのに、ほとんど居なかったということは他のチームから淡々と奪っていたんだろう。


『ちょっと待てよコレ……!A組緑谷以外パッとしてねえ……ってか爆豪あれ……!?』


「A組は1000万ばかりを狙っていたから、他のチームから確実にポイントを稼いでいたB組に負けた……?」


「だろうな。このままいくならB組のどこかから奪うことになる。」


緑谷くんから視線を外して、上位のB組を探す。うろうろと騎馬を動かしながら狙いを定めていく。いつのまにかポイントも取られていたから狙われることもない。他のチームの攻防に巻き込まれて身動きが取れなくなるのを避けるのはなかなかに難しい。


「苗字さん、決めた。あの茨の人がいるチーム。あそこから奪う。」


残り時間僅か。漸くポイントを奪う対象が決まったらしい。示されたのはB組のチーム。特にあの茨の人は私と似たようなポイントの奪い方をしていたのを見た。そして、それは最も気付かれにくく、有効な手だったことも見ていた。


「仕掛ける時は言ってね。準備万端だよ、心操くん。」


- 87 -


(戻る)